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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第6章:輝ける闇

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千種とともに

 わずかな時間で姉の意図を推察する。

 照れくさいようで、守られなければならなかった自分の弱さに恥ずかしくなる。

 だが、俺はそれで生きなければと思う。

 彼女ー千種ーと一緒に。


 立ち位置を決めた。美也子を守る。

 ⋯千種とともに。


「先輩は知らずにあげたんでしょう?」


 我に返る、美也子から放たれた一言。

「田舎の風習としてなら知らなかった」

「なら…」

「大切にしたいと思った。千種が可愛いと思ったからな」

「優柔不断の先輩がぁ?」

 千種ですら「あたしとは別格」と評した美貌の美也子に皮肉で煽られると心が痛いな。迫力が違う。よくまあ表情も変えずに千種は渡り合えるものだよ。かなわないなあ。あの姉とすら互角だもんな。


 美也子を守る決意が早くも揺らぎそうになる。

「何か決めたの?幸平」

 おう。そんな千種の言葉に励まされる。強くあらねば。


「美也子。俺は兄さんの代わりじゃない」

 姉流に、千種流に核心から入る。

「………」

 ごめんな、美也子。答えられる訳ないよな。同意なしに他家に養子として出された六条家長男の兄の幻影を、俺を求めるのはおまえのせいでは決してないはずだ。肉親の情を求めるなんて世間では可愛らしい情感のうちだ。


「だから頼れ。六条だろうが俺が近くにいて守る。ただ千種がいないと俺がダメだ」

「…なんか先輩弱くなりました?」

「やっぱり俺じゃ説得力ないかな」

「…たかだか半年でこんな程度の顔の女に騙されるなんて、ほんとバカですね」

「もうちょっと穏やかな言い方あるだろ」


「たぶん…先輩が選ぶなら…本物の女性(ひと)なんでしょ?」

 さあて、どうなんだと千種を見ると。

「また増えるの?愛人候補」

「またって、高校でもモテてるんですか?婚約者がいても?」

「中学でもまさか?」

「情報の共有が必要ですね、姉さん」

「そうね」


 どうやら妹分に収まることにしたらしい。もともと虫除けに俺の近くにいたフシがあるからな。割り切りが早いと言うか、器が大きいと言うべきか。

 それにしても千種が群れのリーダーみたいに見えるのは暑い夏の幻影だろうか。


 ちなみに六条から改姓した兄とは、六条日向。現在は依田日向さんだ。とりあえずそれを知るのは美也子と俺と…姉夫婦くらいだろう。

 美形は遺伝する例として教科書に載せてくれないかな。いずれ美也子も世に出ることになるだろうから。それほどに美しく育つはずだ。

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