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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第6章:輝ける闇

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偽装婚約

「さて、では後ゆっくり」と女将さんは部屋を後にした。

 残るのは両家の6名。

「どんな味がした?千種」

 と千紗さんが問う。

「う…ん?懐かしいけど初めてみたい…な?」

「キイロバナのお茶の味で初めて聞くわね」

 母娘の会話が流れる。

「はじめまして、遊佐さん。こちらが夫の行朝でございます。大ファンのあなたに会えて少し我を忘れていますが、たぶん日本で一番応援してると思いますよ」

 と軽やかに千紗さんは微笑んだ。

「恐縮です。葉さんとご縁を結びながら、今日まで不義理でしたことをお許しください」

「あらあら。こうしてお会いできたのですから。不義理はお互い様ですよね」

 なんて言うか、千紗さんすごい。

「娘の千種でございます。未だ不束ですが、優しい女性に育ったと自負しております」


 よろしくお願いいたします、と千種は綺麗に三つ指をついた。所作の美しさ。

「こちらの番ね」

 と姉ちゃん。

「遊佐家と言っても結局、晶さん以外親族だもんね。説明した通り遠縁の早名さんのご家族。むしろ晶さんには幸平がはじめまして、だものね」

「あちらの身動ぎしない方が、あなたのドラフトの時に前日水垢離をして、当日に高熱を出した行朝さん。奥様の千紗さん。そして」

「私の命より大切な弟を生涯連れ添って…くれたらいいって願っている千種ちゃん。私の宝物だよ」


 姉ちゃんのこんな言葉初めて聞いた。

「ついでに幸平。水泳の今年の日本一、高校は首席合格。千種ちゃんもね」

 姉ちゃんはチラリと俺を見て

「肩書ばかり先行しちゃって、まだ千種ちゃんには早いんだけど」

「異議ある?幸平」

「滅相もございません」

 俺も三つ指をついた。


「それにしても高校生で結納とは…」

 義兄の晶さんが初めて感想をもたらした。

「対外的なアピールなの。千種ちゃんに将来を約束した相手がいると知れれば、五月蝿い外野も黙るわ」

「それだけを信じると、まるで偽装みたいな…」

「高い料亭使って、正式な高良式の結納の儀なら信じない人はいないわ」

「ふむ」

「あとは二人次第。そのまま別れたり、結婚しても続かなかったり、どこにでもあるわよ」

「好き合った二人…と理解してれば良いのか?」

「90点」

「残りは?」

「時期が来たら分かる、ことね」


 姉はそうやって艶やかに微笑んだ。

 それは俺がまったく知らない顔だった。

 一方で千紗さんは肩の荷を降ろせたかのように安心した「母」の顔をしていた。

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