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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第6章:輝ける闇

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スライダー

 その頃幸平はグラウンドにいた。

 野球部の練習にかりだされて、打撃投手をしていた。プール監視員を大杉姉弟に譲った後だから体が鈍らないようにと、以前から沢村に誘われていた野球部に顔を覗かせたのだった。

 現役が少なく、施設はそれなりにだから一人でも増えればその分活気付く…とのことだったが確かにそうだった。

「何すりゃいいの?」との幸平の問いかけに、マウンドから打者の構える真ん中に投げてくれればいいと、沢村は要望した。


 …だから投げてみた。

 サイドハンド気味からコンスタントに真ん中に集める。


「なんかやたらにコントロールいいね」

 やや太り気味の気のいい川上が沢村に話しかける。

「運動神経のいいやつだからさ。春先にバスケした時、俺も秀吉も抜かれた」

「すごいんだ、彼。早名さんの相方だけじゃなかったんだね」

「川上」

「ん?」

「それだけは本人の前で言うなよ。ガチで凹むから」

「繊細なんだね」

「尻に敷かれてるらしい」

「うわあ」

 早名千種の付属品………世間の目は厳しい。


 マウンドで一息入れた幸平に捕手の田所が近づいてきて言う。

「早名だっけ?」

「ああ」

「曲げられるんだろ?」

「少しずらせばいいのかな」

 幸平はボールの握りを見せてわずかに軸からずらした。

「次は沢村だ。びっくりさせようぜ。指一本出したら曲げて」

「簡単に行くかね」


 結果、膝元要求で2球ファウルをとり、スピードを速くした上に明らかに回転数をあげたボールはポイントの手前で変化し、切れ味の良いスライダーとなった。

 呆然とした沢村が田所に聞く。

「指示したのか?」

「受けたら分かる。ぶっちゃけストレートのキレでもおまえ以上だ。握り変えたらそりゃ曲がるだろうさ。とんでもねえ男連れてきたな」

「即戦力ピーなんて聞いてねえよ」

「まったくだ。あの身長でな。野球部に入るのか?」

「『女神様』次第かな」

「あとは黃田か」

「明日も来てくれるように早名には頼んでみるけど」

 用事があるからと昼近くに幸平はグラウンドを後にした。


(悪寒がするのぉ。看病してくれないと悪化する〜)

(あたしはゆなのお母んじゃないの。昼から大事な用があるから、薬を飲んで寝てなさい。でも困ったらすぐ連絡して)

(あい………)

 ヤンキー娘は心細い。

 仕方がないと千種はキントキに連絡した。

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