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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第1章:最弱選手権者

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博識な15才

 さすがに早名千種は大家さんではなかった。

 誰かと言うと俺の姉らしい。千種が言ってたから真偽は不明だけど。


 さて一人暮らしの我が家…は中古住宅。祖父亡き後、祖母が独居していてご近所さんの世話を借りながら最期を全うしたとのこと。姉が高校通学のために三年同居した時期もあったらしい。それと理由は不明だけど、父は祖母と不干渉であった。姉とは年が離れていたし、住んでた国まで違っていたのだから、俺が今日初めてなのも仕方ない。


 人が住まなくなって数年。庭もそうだったけど家の中も十分手が行き届いている。

「あたしのアルバイト」

 千種はそう表現した。ときおり訪問してはあちこち手をいれて、家を保持してくれていた。庭なんて大変だったろうな。

 なんでも祖母の葬儀の後、姉が段取りしたらしい。祖母と同じ月に俺たち姉弟の両親が事故で亡くなった時に姉はどんな気持ちで当時の日々を送ったのだろう。


 しみじみと感じ入ること数十秒、千種が空気をやぶった。

「なに?悲しいの?」

「しみじみと感じ入ってた」

「えと…いとあはれ?」

「鴨長明」

「芹沢鴨くらい遠いよ」

「新選組だっけ」

「今夜は初夜だね」

 ずいぶんはぐらかしたな。

「いろいろあって疲れてるんだ」

「動物が、死を意識した時に生存本能が働くんだって」

 しみじみの中味を察していたのか。だからふざけて

「博識な15才ですね」

「そう言うなら少しはあたしのことも察してみたら?」

 しみじみを強要するのはいとかなし。


「それで台所はLPね。元栓が閉まっているか目で確認する癖をつけて」

「大切なのは分かるよ。で、他もだけどいろいろ明日の説明にならないかな?」

「そうね。大事な初夜だから時間ないか」

「初夜いらない。明日から学校なんだよ。分かってるよね?今日の入学式も欠席したし、明日大事なんだ」

「あっそう。そういうこと言うんだ」

 千種は少しむくれると、

「幸平が休むから大変だったんだよ」

「どういうこと?」


「そういや千種はどこの高校に通うの?」

 残念だけどこの地方をまだよく知らない。なんでも斜陽の最内さいないと発展中の高良たかよしの二つの都市が長年のいがみ合いより、地域経済を優先して合併して、ついでに二つの町が最高か最良かと言うアホらしい争いで市長選にまで発展したらしい。

 幸い高高ーたかこうーは争いに巻き込まれずに昔ながらの看板を今に残せたとのこと。

「ん、たかこうだよ」

「一緒なんだ」

「ソウデスネ」


 一緒だと不都合なのかな?千種さま。

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