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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第6章:輝ける闇

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このお茶は人生の味

 一方依田はキャッチボール組を眺めていた。

「ジャージくん、俺の方かよ」

 明らかな小学生ににこやかな笑顔を向けながら、目はジャージくんを追う。

 やはり投手主体となると野手組は数が少ない。

 その中で長身はひときわ目立つのだった。

 一応グラブは持参している。

 依田に遊び心が湧いた。

「そこのジャージ」

 不思議なことに周りの子供たちは誰も話しかけるどころか、誰こいつと言った視線を光太郎に投げかけている。

「僕ですか?」

「ああ、そう。どこのチームだ?」

「所属はないです。近所の高校生のチームに混じらせてもらってます」

「そ。ちょっとだけやろうぜ」

 とボールを投げる。光太郎がキャッチしてゆっくりと素直なフォームから幸平が以前驚嘆した、縦回転の山なりのボールを投げ返してくる。3度ほどやり取りして、依田は舌を巻いた。

(とんでもねー逸材じゃん。こんなサウスポーいたのか)

「背はまだ伸びてるのか?」

「途中です」

「ウェートはほどほどにな。無理に筋肉を付けないでおけ。それと指先のボールの感触を忘れるなよ。温度も湿度も味方にすればおまえが助かるはずだ」

 びっくりしたように光太郎は頷いた。

「あざす」

 照れ隠しに依田は周りに声をかける。

「よーし。時間ないからな、希望者10人だけキャッチボールしようぜ」

 殺到したのは言うまでもない。


 教室後。

 クールダウンした二人は再び控えにいた。眼前には小さな湯呑みにわずかなお茶。

「クーラー効いてるけど温かいお茶ねえ」

「おい、日向。失礼だろ」

 案内係がチラッと依田を見て

「この辺でしか採れない植物を煎じた茶ですよ。冠婚葬祭で欠かせないものでして。話のタネに一口どうぞ」

 そう言うことならと二人は口にする。


 なんとも不思議な味わい。清らかでいて深い苦みがわずかに残る。

「美味い…っていいのか、これ。バカ舌の俺にはわかんねーな。どうよ、アキラ?」

「人生の味だ」

「おまえのがバカ舌じゃねーか」

 案内係は笑ってこの植物の名前を教えてくれた。

 曰く「キイロバナ」と。


 二人の美少女はSNSでこんなやり取りをしていた。

(くしゃみが止まんないだけど。千種、幸平くんとあたしの悪口言ってるでしょ?)

(なによ、ゆな。言ってないよ?幸平、朝からどっか出かけてる)


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