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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第6章:輝ける闇

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記憶はまだ胸にある

 球場に着き、担当の世話人が注意やらお願いごとやらを二人に説明する。積極的にこういう行事に参加する二人にとっては慣れたものだ。


 説明が終わりユニフォームに着替えてグランド内に入る。

「おー、今日も満員御礼だ」

 整然と並ぶ選手たちを見て依田は軽く笑む。

「ちゃんと仕事しろよ」

「たりめーだ。ちっこいのから…ん?」

 ひときわ目立つ長身が三名。

「なあ、参加は俺たち二人だけだったよな?」

「その通りだが。確かにデカいな」


 一人はジャージ。二人は同じチームらしく揃いのユニフォーム。

「資格って今回中学生までって聞いてるぜ」

「まあ中学生だろうな」

「期限ギリギリに獲得した3Aの選手が混じってるみてーだ」

 二人は明らかに異民族の風貌だった。だがよく見ると同じユニフォームの選手たちが他にも複数いて、皆で和気あいあいと話している。

「ジャージの方がぼっちみたいだな」

「知り合いがいないようだ」

「気にかけてやれよ、アキラ」

 当然二人は知らないのだが、ジャージは大杉光太郎だった。


 1時間は短い。だから実際は技術指導よりモチベーションアップが目的になる。

 素振りをしたり、キャッチボールをする選手たちに声をかけながら、気がついたことがあれば一声かける、そんな教室だった。

 やがて実戦風の打撃。3球までと区切られた打席をプロに見てもらい、寸評をするのが遊佐の仕事だ。長身の一人が打席に入る。やたらに落ち着きがないようにバットを動かしている。だが初球を待つ瞬間にピタリと静止し、真ん中に投げられたボールは綺麗なスイングの後、とてつもないスピードのライナーで外野のはるか先に飛んでいった。

「ナイススイング。君、名前は?」

「ロゼタロ」

「ん?」

「ロゼが姓で太郎が名前」

「おお…そうか。このまま楽しく野球続けてな」

「はい、ありがとうございます」

 嬉しそうに少年は(少年?)、打席を後にする。

 次もまた異国の風貌の少年。今度は先に遊佐が問うた。

「君は?」

 慣れているのか、淡々と少年は答える。

「ブート・キャリパーです」

 太郎とは逆にきちんと態勢を構えると、少年は不動のままやはり初球を捉えて、美しい放物線を描いてスタンドまで届いた。

「仲間を大切にしてな」

「はい」

 ブートは打席を退いた。


 遊佐が少年だった頃に数年だが、鮮烈な活躍をした二人の助っ人外国人の名。再び聞くことになるとは。

「当分は辞められないな」

 少年の日の記憶はまだ胸にある。


 橋本はくしゃみが止まらない。

「おかしい。風邪かな?」

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