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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第6章:輝ける闇

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ヤンキーゴーホーム

「なぜだかな、妻がおまえを連れて来てくれとリクエストしてきた」

「……へえ」

「珍しいな、軽口が出ないのか?」

「………おまえの嫁さんだからな、一も二もなくかっこよくて頭がいいんだとは思ってるんだが…」

「ああ、可愛くて綺麗で、繊細な上に勇敢だ。家族思いで…」

 依田は軽く手で制して

「分かったから。みんな聞いてもよく分かんね。今まで電話でチラッとしか話したことないから、どんな人か想像つかないんだけどさ、………なんつーか…」

「怖いか?」

「つま先から髪の先まで見通されてるような」

「おまえが単純なバカだからだ」

「うるせ。高校んときは俺のがずっと成績良かったろ?」

「確かに」

「相手に決め球を予測させて逆算で打ち取るから飯が食えてんだよ」

「俺にとってはおまえが一番球が速いからな」

 相手を知るほどに術中に嵌める、依田日向とはそういうタイプの投手だった。正確無比のコントロールと変化球のキレがあればこそだが。


「プロでやってるプライドがあるから、知らないタイプは重視するんだよ」

「数回話しただけで分析するおまえもすごいんじゃないか?」

「明日の先発、Tだろ?初球のストレートを外野の前に落とせばお仕事終了だ」

「一打席ヒット打てばお客さんは喜んで、Tも次に集中できる。投手が本職のおまえが盗塁するわけもないからな」

「そういうこと。おまえの嫁さんだ。これ以上言う必要ないだろ」

「すまん」

 ひとしきり笑い合った後、時間が来たと二人は予定地に向けてチャーターされた車に乗り込んだ。


 数十分あたりの景色を眺めているうちに球場に着いた。

「立派なもんだな」

 近年新設されたと言う球場を見てぽつりと依田はこぼした。

「これだけ見ても、この地域で野球振興を真剣に考えてる人がいるのが分かる」

「おまえの給料で建てられるだろ?」

「たぶん現役分全部で足りるかどうか」

「アメリカに行っちまえ」

「妻が反対なんだ」

「マジで考えてるの?」

 少し驚いたように依田は遊佐を見る。

「日本にやりたいことがたくさんあるからみたいだ。それに野球のためにアメリカに行くなら離婚だと言われた。…正確にはアメリカに行くつもりなら結婚できないと」

「写真でしか見たことないけど東海岸出身のヤンキーあがりには見えなかったけどな」

「このあたりで育ったと聞いてる」

「田舎にヤンキー文化があるのか?」

「知らん」


 その頃橋本結菜は一人くしゃみをした。

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