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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第6章:輝ける闇

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暑い夏の日の始まり

 季節は少し進む。

 連日猛暑の日本列島でプロ野球はオールスターブレイクを迎えていた。

 そして高良の駅前に…。遊佐晶と依田日向はいた。2人ともオールスターに選ばれていたが、遊佐は前半最終戦で守備時にランナーと交錯し、幸いにも軽傷だったが球宴を辞退することになった。不可抗力とは言え、そのため後半の数試合は規定によって出場が不可能となる。一方、依田はシーズン前の衝撃的なトレード(前年の本塁打王と最多勝)で遊佐のチームに加入し、ここまで前年を上回るペースで勝ち星をあげている。

 やはり前半最終戦で完投したため、オールスターはDH1試合の出場と見られていた。打撃もかなり評価されているのだ。

 プロ野球界は将来的な人材獲得に危機感を抱き、試合開催地の周辺での若年層への技術指導を、シーズン最中に関わらず行うことにしていた。あくまでも選手が自由意志で希望した日、場所に限ってだが。指導1時間、拘束3時間と言う負担の少ない縛りである。


 遊佐晶は妻の累に繋がるこの場所を希望した。一度訪れたかったのだ。

 駅前で1軒だけの喫茶店に大柄な男が緑茶を前に読書をしている。


 カランと音がした。

 扉を開け、やや明るく染めた長髪のやはり大柄な男が入ってきた。

「また、本読んでるのか、ネクラのアキラ」

 長髪がすぐに待ち合わせの相手を見つける.

「顔が取り柄にはなりたくないからな」


 ピリつく。

「あーん?」

 ファンの間では有名な「野球も得意な哲学者」と「野球がなぜか得意な軽薄者」のじゃれ合い。

「上等だ。俺の上に乗れ」

「そう言う冗談が俺には分からん。おまえ、誰かを口説く時にも言ってるだろ。俺にその気はない」

「冗談が通じないね、ほんと。何読んでんだ?」

 依田が本に目をやると、それには古代シャーマニズムと女性の考察云々とタイトルがついている。

「なんだ、これ。おまえの趣味じゃないだろう?」

「ああ。妻から読めと」

「妻から嫁に進化したのか?」

 あははと遊佐は笑う。

「おまえの笑いのツボが分かんねーよ。とにかくバッターは目が命、だろ?引退してから好きなだけ読めばいいじゃねーか」

「その通りだな。シーズン中は1日に30分までにしてる」

「今日は野球教室を午前中に終わらせたら、半日だけ束の間のオフなんだからよ。やっぱり義弟に会いに行くのか?」

「きちんと会ったこともないし、日本一のお祝いも渡してないなからな。妻も昼から合流予定だ」

「どうせだし、付き合うぜ。邪魔はしないからさ。半日じゃなんもできん」


 幸平にとっての義兄、遊佐晶と幸平の初めての対面の日だった。

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