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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第5章:みんな居場所を求めてる

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柔らかく笑う千種

 さて話は大杉家族がこの町に初めて来た日のわずかに後の平日に戻る。

 最近登校しなくなったメガネなしっ子鈴木がいないせいか、同じクラスで鈴木と仲良く見えた日下部さんも佐藤さんも心なしか元気がない。

 そして男子間では神格化されつつある(なぜだ?)千種も御地以来、落ち着きが深まっている。湖のように。

 かと言って相変わらず沢村はナカジマだし、太閤田中たちはそれなりに姦しい。男3つの漢字あるのか?


 千種に今日も居眠りを咎められていると日下部さんが俺たちに話しかけてきた。

「お母さんからきいたんだけどさ」

 うん?早名から出た人だっけ。

「最近早名くんたちなにかあった?」

 俺に質問するより、千種に聞いた方が自然だろ。

 日下部さんは千種を見ないようにしてるとしか思えない方向で俺に向かう。


 まあ、あんなオカルティックなことを話せないし適当に誤魔化すしかないよね。

「橋本が予想以上にテストの点が悪かった」

 いろいろすまんな、橋本。

「まるで身内みたいね」

 くすっと笑う日下部さん。隣にいたメガネっ子さんも重たげな表情を崩して笑う。

 どこか早名とそれ以外の壁みたいなものに違和感を覚えても簡単な思索では届かないことを感じる。


 瞬間的に千種の雰囲気が変わりそうだった。何かに過敏に反応する時の気配。珍しく俺以外に対して攻撃的になる………かもしれないので、

「やっぱ水泳はすごいよ、あいつ」

「橋本さん?日本選手権で優勝したんだっけ?」

「春先のあれなら……3位だな。この間のインターハイの県予選の地区予選でぶっちぎりだった」

 春先のあれ…でいいのか分からないけど、日本選手権に比べてこの地区予選は橋本にとっては練習にもならない。高校まで水泳を続けるのは個人であって、高校から始めようとする機会のある場合は少ない。未経験者が始めるには敷居の高いスポーツではある。

 そんなわけで我が水泳教室コースの面々も個人で県大会を決めた橋本、児島姉の他に児島妹、マロさんでリレー種目の県大会出場を決めたのだった。


「千種はマネ?」

 空気を読んでか日下部さんが千種に話を振る。

「ん。そうだよ」

「千種は泳がないの?小学生の時速かったよね」

「こっちが手間かかるから」

 俺を指差すな、千種。

「また、惚気?」

 妊娠かと流れた不穏な噂は、もとより千種本人の人徳のおかげであっという間に霧散して、今や単に千種の付属品と成り果てた俺。

 気勢を削がれたように千種は眉を下げる。


「違うよ」

 柔らかく笑った。


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