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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第5章:みんな居場所を求めてる

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勝負

「おばさん……?」

 赤髪の女性がしかめ面をして橋本を見る。

 見ようによっては金髪対赤髪のヤンキー対決だ。

 わずかの間お互いに睨み合ったあと、フッと赤髪の女性が笑った。

「なにか用?」

「あちこちでプール破りしてるみたいね?欲求不満なの?」

 ストレート過ぎる橋本。


「不満てば不満かな」

 おぉ…会話が成り立っている。

「いい年みたいだけど、平日までこんな田舎にいるんだから働いてないんでしょ」

 煽りに煽る。

「何してんだか」


「ふーん………。噂通りはっきりした性格してるね。橋本三姉妹の真ん中だっけ?お姉さんコンプレックスこじらせすぎ」

 橋本が煽り返された。

「な………!そこまで言うなら勝負しなさいよ」

「へええ。バック?フリー?」

「あなた北玲でしょ。ならフリーに決まってるじゃない」

「いいけど……。あなたじゃ、ね」

「あたしじゃない。こっちの…」

 と美樹を見やり、

「今年の日本一が相手するわ」

 見事な他人任せだった。


「今年の?あなた大杉さん?」

 いきなり振られた美樹は慌てたように橋本に抗議する。

「そんな急に言われたって…。大杉美樹ですが」

 なるほど、と赤髪の北玲は頷くと

「なんでここにいるのかしら?まっいっか。久しぶりに本気で泳げそうね。50mでいい?」

「勝つとか負けとかなしですよ?」

「見た目通り。ほんとに闘争心ないのね」

「いえ、さすがに引退した方と勝負するのは失礼ですから」

 あれまあ。本来無口な美樹まで熱くなってしまって。


「幸平、いいの?」

 千種が心配そうに尋ねてきた。

「北さんの事情わかるなら言い様もあるけどねえ…」

 横で成り行きを見ていた児島みさがまぜっ返した。

「なら負けた方が勝った人の言う事をひとつきくってどう?」

 面白がってますよね?先輩。

「それでいいわ」

 いいんですか、北さん?

「幸平、まるで役に立ってないよ」

 んなことは初めからなんだよ、むしろ橋本に文句言ってくれ、千種。


 いきなりの頂上決戦はこうして始まった。

 互いに約20分のウォーミングアップを終えた後、スタート台に北さんと美樹が立つ。

 スタートの笛(それしかなかった、いかにイレギュラーな事態か分かるよね?)と同時に飛び込む二人。

 勝負はあっけなかった。一かき分の差をつけて北玲は先にタッチした。

 短水路、素人の手動計時にしても24秒フラット…。


「スタートが遅い。浮かび上がりのドルフィンが甘い。ターンで合わせすぎ」

 あっさりと北玲は大杉美樹を一蹴した。


 あの全力に見える動きの中でそこまで観察できるものだろうか。

「ついでに和田幸平くん。あなたもする?」


 いえ、丁重にお断りいたしますよ。

 たぶん北玲は本物の強いスイマーだ。15才で頂点に立ち今でも、だ。


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