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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第5章:みんな居場所を求めてる

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おばさん、ちょっと

 夜の少し恥ずかしい会話を経て、今日の放課後もフィットネス教室のバイトだ。そのうち大杉美樹や光太郎に代わる予定だけども。

 お役御免となりそう。


 ヒメさんの泳ぎが一向に上達しない理由を考えながら

「センスってスポーツに必要かな?」

「うちに何を求めてるのかな?」

「やる気」

「あるよ!」

「意気込み」

「毎日来てるだろ!」

「色気」

「幸平!!」


 うわっ…千種…じゃないな。あっちで橋本相手にタイム見せてるし。横には美樹。


 誰だよと見回すとマロさん?


「びっくりするからやめてほしいな」

「ぬふ〜、驚いたっしょ」

 タイムは伸び加減だけど声色真似る特技があったなんて、これから要注意だな。


「幸平!!」

 二度目は簡単に……あれ?

 千種がこっちに向かって叫んだみたいだ。

 何事かと千種の指差す方を眺めやると、赤い髪。

 長身の体躯。

 どこかで見た覚えのある顔立ち。

 子供の頃に見たような?


 一応公共施設の体をとっているので、たまにこうやって一般の人も泳ぎに来るけど、最近は顔馴染みばかりだ。明らかに赤髪の女性は初めて。

 千種や橋本、美樹に近づいて話しかける。


「プール破りの赤髪だよな?」

「ねえ?あの人…」

 橋本かなにかを言いかけたとき、赤髪の人はプールに飛び込んだ。綺麗な自由型だ。

 スケールの大きな上腕、リズミカルなキック、間違いなく経験者、しかも最上級だ。


「あの人、北玲(きたれい)じゃない?」

「あの?」

「メダルいらない、の?」


 水泳王国とかつて呼ばれた日本水泳界でも女子はやや違う。時折現れる個に優れた女子選手はそれなりにいたが、その選手だけが強く全体的なレベルは世界的に高かったわけではない。特に自由型短距離は体格の差が顕著であり、いつの時代でもオリンピック、世界水泳でも準決勝にあがるのはおろか派遣記録すら突破するのが困難だった。そこに風穴を開けたのが、北玲である。およそ10年前に彗星のごとく現れ、瞬く間に期待の星に駆け上がったと聞いている(俺たちが小学校にあがる前の話だしね)。

 しかし、わずか二年後には舌禍事件(楽しむためにやっているのであって、見も知らぬ人=日本国民のために泳ぐんじゃないと啖呵を切って「メダルなんかいらない」と言い放ち、その後アメリカに留学し、半ば引退状態のまま人々の記憶に消えた)

 で姿を消したはずだった。


「なんでプール破り?」

 と泳いでいる北玲を見ながら橋本は不思議がる。

「ねえ美樹?ちょっと相手してあげたら?」

「え、私?」

「せっかくだからさ、プール破り退治しようよ」

 橋本…おまえ悪いやつだな。

 でもかなりワクワクする。

 歴代1位と2位が直接この目で見れるんだぜ。


「おばさん、ちょっと」

 早速喧嘩を売りにいく橋本。

 うん、おまえ悪いやつだわ。

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