表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第5章:みんな居場所を求めてる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/212

重い女

「どうやらこの県にも今来てるらしいのよね」

 橋本のレーダーに引っかかったらしい。

 数は少なくもののSNSにつぶやきが流れているとか。

「興味あるでしょ」

「「「ない」」」

 光太郎以外は一様に否定。

「知らないかもしれないけど、今のプール公営みたいなもんなのよね」

「町がお金出してるの?」

「補助金は出てるみたい」

 ワクワクした顔で橋本は

「あたしたちのプールにも現れるかもね」


 秘蔵録画が底をついたようで、行朝さんの強引な解説は落ち着いている。

 落ち着かないのはむしろ俺と千種だ。

 毎夜復習、予習に付き合わされる。

 入試こそ互いにトップだったけど、一学期の中間テストでは俺は平均点にやっと届くかどうかだった。千種も学年二桁と面影がない。

 そこで一念発起した千種に発破をかけられて、学力向上をと夜な夜な二人向き合うのだった。


(それにしてもどうしてこんなに信用してくれるんだろう)

 端正な顔立ち。長い明るい色の髪。

 アルトの声は風に負けず俺の耳に届く。

 同じ屋根の下にいて、次第に惹かれていく自分の心が不思議だった。

 そしてまた、この美人が無条件で俺を受け入れたことも不思議だった。


「なによ、じっと見て。進んだの?」

「!! あんまり……」

「あたしが美人で惚れ直したか」

 ニヒっと笑う千種。

「それはないけど…」

「なんですって?」

「少しだけ…」

「あたしはさ…」


「10年待ったけど、そうでなくてもあなたを見つけていたと思う」

 心を読まれたかとドキッとする。

「片割れの半分みたいな気がするんだよね」

「双子じゃあるまいし、そんなことあるかなあ」

 奇遇だね、俺もそんな感じをたまに受けるんだ。


「葉さんと御地に行ってからかなあ。あたしあそこで意識なかったでしょ?」

 千種はあの時間の記憶がないと語っていた。あのことを言っても誰も信じてはくれないだろうし、その場であったことと言えば、姉ちゃんと千種に身を借りた誰かが会話しただけだ。多少の不自然な現象はあったとしても。

 誰なんだろうな、あの昔みたいな喋り方する人。しかもなんか千種に憑いてるっぽいし。

 口が裂けても本人にも、他の誰にも言えないけどね。


「担いでくるのに結構大変だったんだ」

「重いって言いたいの?」

 シャーとばかり猫の威嚇を繰り出す。

「幸平いないと考えられなくなるくらい、違う意味で重くなってるけど」

「光栄です、千種様」

「幸平だって最初の印象から変わってるよ」

「カッコよくなったと」

「それはないけど」

 と笑う。


「あなた少し思慮深くなった」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ