赤い髪のプール破り
近頃プール破りが出没しているらしい。
意地でも驚かないからな。
「プール主に勝ったら看板もらえるの?」
「プール主ってなによ」
橋本。
「看板ってなんだ」
俺。うん、無理。
千種はときどきアホの子になる。
それも可愛い。
「幸平もお馬鹿の仲間?」
「再試験だったよな?」
OK…傷つけ合うのは止めよう。
あっけに取られる大杉姉弟。
噂を最初に聞いたのは大杉姉。なんでも赤い髪の女性が公営プールのセンターコースで、辺り構わず全力で泳ぎ散らかしたあと、あっと言う間に消えたらしい。
「むしろプール某仔馬?」
字まで違うぞ千種。暴行魔な。
近況を東京のコーチだった人にしたところ、怪事件だとしてちょっとだけ話題になってるらしい。
次が橋本。やっぱり地域の知り合いに連絡をした際に同様の話題が出たらしい。
「橋本に知り合いいたんだ」
「あたしにだって選手権に付き添ってくれるコーチくらいいたわ。その人くらいだけど」
不憫だな、橋本よ。黙ってりゃ美不良少女なのにな。
そして尻をつねるな、千種。
痛いです。
御地の出来事から一週間後の大杉宅(俺は引っ越しと言う名の強制連行で千種邸居候中)で橋本は騒いでいた。
野球以外は無口な光太郎、内気な美樹、基本は静かなること湖のごとし千種、だからいつの間にか橋本が中心になる。
ムードメーカーって大切。
美樹は(大杉だと弟も含めるから呼び名が美樹になってた)高高へ、光太郎も近くの中学へ無事編入した。光太郎は病院に毎日通いながら、高高の野球同好会にこれから時折参加するらしい。付属病院が高校のすぐ近くだからね。にしてもこれは同好会の癖に青田刈り?
ナカジマのニマニマした顔が浮かぶ。
美樹はフィットネス教室と言う名の女子水泳部へ。なんでも実績がありすぎて、逆にアルバイト制限がかかったらしい。行朝さんの配慮によるものだろう。なんか姉ちゃんの設立する予定の基金に多額の寄附が寄せられる見込みがあるらしい。そうでなくてもあの夫婦稼いでるからなあ。
っと嫌らしい話でなく、赤い髪のプール破りの話が続く。