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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第4章:サナノキ

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収束5 了

 あの時以来の御地(おんち)

 キイロバナの群生地でありながら、なぜか人影がない。

 斑に咲きほころび始めたキイロバナは美しい。


「引っ越して来たのが高校入学のときね。去年、ここに来たときは全然咲いてなくて。悔しいから来年もう一回来ようってさゆりと話してたんだ」

 みささんが説明する。

「来たばっかりでよく知ってたね」

「パパが誰かから聞いて来たんだよね」


「千種ちゃんのリボンってもしかしたら?」

 さゆりさんが千種に質問する。

 二人のコミュニケーションって初めて見るぞ。

「幸平から約束のリボンだって」

「きゃっ!」

 あの二人乙女か?

「けっ」

 なぜかそっぽを向くみささん。橋本みたいなひねくれ方するんだな。

 の割には橋本と性格が合わないと思うんだけど。

 同族嫌悪か?


 ひとり大杉だけがぼーっと辺りを眺めている。

 なんで姉ちゃん、大杉を連れていけって言ったんだ?

 まっ確かに綺麗な花ではあるけど。

 しばらく美しい群生を眺め、満足したのか先輩たちは俺たちと別れて降りていった。


「もう少し先」

 千種が不意に言葉を放つ。

 どこか常とは違う雰囲気にまたかとヒヤリとする。

 他に違和感を感じる人がいないせいか、みなぞろぞろと動き出す。


「こっち」

 千種がいつしか先頭に。

 いやそっちなにもないだ…あ…

 ()()()()()()()()()()


 その先にはキイロウラムラサキにしては巨木。

 いったい何年自生してきたんだ?

 無数の花をつけ。

 泣くように歌うように揺れる。

 意思があるがごとく風に吹かれる。

 他者を拒絶し、しかし求める。

 他人を見ずしかし咲き誇る。

 矛盾。

 ぐるぐると胸の中にこみあげるもの。


 何かを感じたのか涙を流す千種。

「無沙汰した twe-yo」

 千種の発した言葉の後半。とよ?てぃよ?

 そして。

 一瞬の風が吹き、千種の髪とリボンが舞う。

 刹那。

 巨木は普通より少し大きい()()のキイロバナに見えるようになった。


 気がつくと神社の境内。いつの間に降りてきたのか。

 なんだか風に巻かれてここまで運ばれたみたいだ。

 解散して帰り道。

 大杉はぽつりと漏らした。

「お母さん会いに行きたかったのかなあ」

「あれサナノキ」

 千種が答えた。


 顛末は千種が姉ちゃんに報告した。

『贖罪とか別れとか』、そんなことを姉ちゃんは言ったらしい。()()()が来れないのならば、一番近しいものがあの大木に行く必要があったとのこと。遠い昔に関わることらしく、推し量ることは俺には無理だった。


 橋本は再追試をどうにかクリアしたとその夜報告してきた。俺も千種もその時点まで再追試のことを知らなかった。


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