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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第1章:最弱選手権者

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千種(挑発は乙女心)

(月夜だったはずなんだけどな)

 主演女優のように彼女だけが風景から際立つ。

 まるで彼女が浮かび上がっているように見える。


 地方の半端な田舎町の夜はまだ寒い。ゆっくりと冷え込む気配をBGMに、彼女は僕の足音か携帯音声を聞きつけたのか、ふっと頭を上げた。

 その整った顔を見た瞬間、ぼくの頭の中でなにかがきっちりと「はまる」感じがした。無くても気が付かず、だけど知ってしまえばあるのが当然のもの。

 そんな感覚に困惑する僕をすっ…とまっすぐに見据えて、彼女は声を掛けてきた。

 かなり美人で穏やかな湖のよう、第一印象だ。


「予定通りなんだ。遅刻はしないタイプ?」

(同い年くらいだろうか?)

 と思案する。一応敬語っぽく話してみよう。距離感が分からないときは遠目から入る習慣が身についている。


「綺麗な人を待たせたことはないと思います」

「初めての挨拶がそれなの?」

「亡くなった祖母からの遺言で、美人は待たせるなって」

「そのおばあちゃんと毎日話してたけど聞いたことなかったな」

「関係者の方ですか?」

「お孫さんのあなたが聞くの?」


 このやりとり、強敵だ。

「遅刻したことは今までになかったと思います」

「そ。それってたぶん大事だよね」

「………」

「………」

 待ち合わせしたっけ?


 理不尽には理不尽を。

「悪い。誰なんだよおまえ」

 あえてきつく言ってもそれに関せず

「ちぐさ。早名千種(さなちぐさ)ってあたしの名前」

 さて。割と難読、珍しい部類の姓だと僕の名前を思ってたけど。

「僕の関係者の方ですか?」

「ん、あなたの」


「あなたのおばあちゃんの関係者になるのかも」

 こうなればお手上げだ。

 さなー早名は母の姓。母の親戚は会ったことがない。

「先に謝るけど、分からないし知らないんだ。僕は早名幸平」

「割切りの早さはお父様由来?」

 なんかいちいち一縁(と思い出)に紐付けるんだな。

「社会の中での父さんの評価を僕はまだ知らなくていいと思ってる。それに…」


「そんなに容易く他人の内面に踏み込むなんて腹が立つと思わない?やっぱり君は誰なんだ?」

「あたしが美人で良かったと思うようになるわ」

 確かに美人だ…とさっきから繰り返して思うけれども自分から言うか?

「あなたの奥さんになる予定。照れちゃうけど」

 一気にそれだけ吐き出すと、

「会いたかった。あたしの愛したかった唯一人のひと」


 …………え?




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