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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第4章:サナノキ

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収束2

「生理が来た」

 端的に大杉は表現する。

「ここに来る前の日に男二人に抱かれた。勇気がなかったみたいで中に出さなかった」

 冷静であるべきだ。判断した俺は聞いてみる。

「それは」

「お金のため」

 哀しい、15才だなと思う。


 今年の短距離覇者。

 その男女はあまりにも後に続く軌道が違った。

 かたや家族のために身を売り、かたや新しい地で生涯を宣言する異性に出会う。

 そこに読み取れるものなどないし、第一傲慢だ。


「ここに住んでいいのね?」

 千種が聞く。

「お願いします」

 俺たちはなにもできず、行朝さんに伝えるだけ。実質大杉の言葉は家族の総意として構わないだろう。

 わずかな会話で軌道は交錯することとなった。


(話さないやつだな)

 光太郎を評するなら一言だ。

 無口。

「なあ?姉さん好きか?」

「大事にしてくれた。捨てようとした」

 俺よりだいぶ大柄の年下に頷く。

「母さんは?」

「僕を育ててくれた」

「嫌ったりしてないのか」

「なぜ」

「アルバイトがある」

「やらせてください」

「高校生になったらな。勉強は?」

「真ん中より上でした」

「家族でいたかったら、高高に来いよ」

「野球部ありますか?」

「ナカジマがいる」

 不思議そうに光太郎は正座の姿勢から見上げてくる。

「なあキャッチボールしないか」

「は?」

 行朝さんから借りてきたグラブ。光太郎はわずかな荷物に左利き用のグラブを持参していた。

 硬球はナカジマから借りてきた。


 20mほど離れ軽く投げる。スリークォーターから綺麗な縦回転のボールが伸びてくる。

 素人には怖いレベルだ。

 黙って20分。汗が出る。本物なんだろうな。

 少なくても俺の見た限り、野球部一のナカジマさえ軽く上回る。

「驚きました。水泳より野球の方が上手いんじゃないですか?」

「せめて10cm」

「え?」

「背の話だよ」

「ああ……そういうことですか」

「たまにでいいんだけどさ、また付き合ってくれ」

「僕もお願いがあります。朝のロードワーク一緒に」

「行こか」

 大杉たちが来て四日、光太郎が着いて三日目の夕暮れだった。




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