収束1
「高校最初の試験をサボるなんてやるねー、幸平くん」
ヒメさんは含み笑いをしながら茶化してきた。
「サボりたかったわけじゃないし。だいたい橋本に呼ばれたんだからな」
「嫁も愛人も朝から抱きほう……」
「ヒメ…?」
怖い声がしましたぜ、ヒメさん。
離席していた千種が戻ってきた。
「千種、追試大丈夫だって?」
「人助けだから特例だって」
「泉田先生が頑張ってくれたみたいよ」
ほほー、やるなあの爺さんと思っていると千種は
俺に向かって
「今日だって」
「マジか。」
「放課後」
橋本は死んだ目をしていたらしい。
あれから三日。整理すると、救急車はすぐに高校付属病院(大学は来年開校なのでとりあえず…らしい)に入り即入院。見立てではこの地方特有の風土病ではないかとのこと。この病院はそれに特化して設立された経緯があるらしい。当初よりも総合色が強くなったとも。全部行朝さんの受け売り。
大杉の事情を聞いた千種と橋本がそれを行朝さんに伝えると、行朝さんの決断は早く(なんでも小学校の書き初めは「先手必勝」が恒例とのこと)、すぐに青写真を描いた。
水泳の特待枠見学で親子で来た時に、体調を崩し入院、大杉は弟ともどもこちらで生活させるとのこと。
千種からか行朝さんからか、姉ちゃんに話が回り
姉ちゃんは風土病救済基金を設立するらしい。病による困窮などを救済、援助する目的で対象は本人及び家族。
「家はどうするのさ?」
姉ちゃん曰く
「幸平は千種ちゃんにあげたから、一緒に住むよね?そしたら空き家あるよね」
そうですか。賃貸にして、俺は他家で借家人ですか。
「いいじゃん、早名家の主になりました早名幸平ですって近所に挨拶すれば」
「数カ月前にまわったばかりだぞ」
「出世したねえって尊敬されるよ」
んなわけあるか!
「幸平、この間の場所に千種ちゃんと…大杉さんで行ってごらん」
あそこか………。行きたくないんだけどな。
「この時期立入禁止になるはずだけど、咎める人もいないだろうし」
「なにかあるん?千種連れてきたくないんだけど」
あんな千種二度と見たくない。
「鎮まってるから大丈夫。今は大人しく憑いてるみたいだし」
よく分からん。
そうして橋本以外は無事テストをクリアした。




