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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第4章:サナノキ

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62/213

落日

おそらく数話しんどい話になります。

鬱っぽいのが苦手な方にあらかじめお知らせいたします。

「不思議な縁なのかな?」

「ちょっとお使い頼んだだけよ」

「橋本がきっかけ作ったよな」

「微妙なところよね」


「なあ…なんでイヤホン?」

「願掛けみたいなものかしら」

「ロマンチストだっけか」

「新しい場所にひとりで行くのよ。それくらい頼りたくなるわ」

「結果が分からなくなることだって、充分に可能性あっただろ?」

「結果を確信できて行動する?」

「言葉がないな」

「本音言うとさ、ちょっと縁ができればいいなと思った。でもそれだけ。だから」


「あたしがここで救われてるみたいに、誰かが少しでも救われたら、

 あたしだって産まれてきた意味あるでしょ?」

「……キュンとした」

「少しは見直した?」

「そんな橋本にいい男紹介するよ。ナカジマって言うんだけど」

「やっ、イソノくんもナカジマくんも嫌い」


 身の丈と言うのは辛い。

 自身がどれだけ努力しても親は母のみでしかも病が進行している。難病と分類される症状だ。

 弟もいる。私より周囲では有望視されていると言って良い。だが中学生である弟が例え有望校へ行けたとして誰が母を支えるのか。

 消したい記憶だが処女さえ売った。

 片手を越える紙幣を手にしても滞った支払いで1週間もたたず溶けた。

 それに…せっかく無償で進学できた高校でさえ、母の看病のために部を休みがちとなり、それは練習態度が悪いと判断され、初めてのインターハイ予選さえ出ることが叶わなかった。


 初夏にして、私は万策尽きた。

 周りを恨むとか、どうして私がとかもうどうでもよくなった。

 最近は死を意識する。病院の帰り、悪夢の朝に目覚めた時、頻繁ではないが、選択肢の一番には死ぬことでの清算がくる。


 もういいよね?

 誰も答えてくれない。


 今見える落日のように静かに終わろうか…。

 それとも………。

 ふらふらと近くの自動ドアに足を踏み入れる。

 百円均一の店だ。

 包丁買えるんだ。

 110円まだあったかな?


 数える。

 あるね。たったこれだけでみんな終わる。

 これがあればもう終わる。

 終わる。

 終わる。

 終わる。


 母が終わる。

 弟が終わる。

 私が終わる。

 みんな終わる。

 みんなみんな終わる。



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