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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第3章:ツガイ

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葉の危機感13

 傷つけてはいけない。

 とっさに前に踏み出すより先に、幸平が腕を掴む。

「誰だよ、おまえ!」

 珍しく声を荒げる弟。

「あああ……呼ぶのか、卑しきもの」

 千種ちゃんとは思えない低い声。


「金色の印などいらぬ。生口も奴婢もわれを満たさぬ。()もまた力がほしいか」

「いらないなら寝てなさい」

 私は歯向かう。

「起こすのはいつも卑しき汝どもよ」

「あなたが未練がましく辺りを彷徨いてるからじゃない」

「背はまだ」

「死んだのよ」

「………」

「死んだのよ」

「………」

「あなたの大切な人、死んだのよ」

「泣くか、汝」


 姉ちゃんは泣いていた。

「あなたが認めないから…私の、ここにいる大事な弟の親も死んだのよ」

()が故と?」

「認めなさい、あなたの大切な人も……」


()()()も死んでいるのよ」

 沈黙する誰か。

「そうか、問う、吾は誰そ」

「穢れ」

「あなたの、あなたが祓った穢れ」

「…………………」

 長い沈黙。


「吾が為り失せたか」

「私の命を。弟と大切な人はここに」

「…………………」

 再びの長い沈黙のあと

「つまらぬものは」


「いらぬ」


 圧力が弱まるように千種ちゃんは脱力する。

 弟がすでに彼女を抱え、座り込む。


「なんなんだよ、あれ」

「んーー嫉妬の固まり?」

「なんで可愛い子ぶってんだよ、年!」

 本気で殴ろうとした時、千種ちゃんが目を覚ます。

 慌てて取り繕う。怖いお姉さんなんてどこにもいませんよー。

 ゆっくりと千種ちゃんの背中をなでながら弟が尋ねてきた。

「あんなこと言って姉ちゃん大丈夫なの」

 私は確信を持って答える。

「大丈夫じゃないかな」

「そんな気楽なやり取りだったかなあ」


「喧嘩してないし」

「あれで?」

「あれはね」


「共感」

「へ?」

「女子会」


 弟は理解を諦めたようだ。

 それでいい。千種ちゃんを大切にして。

 あんな悲しみをこの子にさせちゃいけない。


 正直は美徳だった。




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