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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第3章:ツガイ

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葉の危機感11

 社殿は開放されている。

 どこもかしこも、だ。

 すべてが。

 見渡せる限り部屋すらない。


「気持ち悪くない?」

「え?」

 初見の幸平はともかく、千種ちゃんは子供の頃から通いなれている。こう言うものだろうとまったく疑うところが分からないはずだ。


「なんかさ、落ち着かない」

 感じるなんてさすが最愛の弟。

「寒いせいか、トイレ行きたい」

 サイテーだわ、あんた。


「改めて聞かれるからなにかあるんでしょうけど…えっと…やだなあ、『なんか()()』」

(早いね、さすが早名のエリート)

「千種?なにがいるんだ?」

 わずかの後、

「え、あたしなにか言った?」

 千種ちゃんは驚いたように私を見て、

「一瞬だけ、気持ち悪かった」

 と告げた。


「なんにもないのよね」

 答えを言う。

「そう言われたら…仏様ないね」

 大筋正解だよ、幸平。

「お寺じゃないから仏像がないのは当たり前だけど、御柱も…いわゆる偶像がないのよ、ここ」

「空っぽってこと?姉ちゃん」

 むやみに女の子が寄ってくるのはそういうとこだぞ、幸平。(くう)だけどね。


「私暇な時に調べたんだけど、空っぽをお祀りする宗教なんて日本にないのよね」

 売るものがなければ商売が成り立たない。当然の理屈だ。現世利益であれ、悟りを得るためであれ、売りがなければならない。

「幸平なら分かるでしょ?」

「…?キリスト教的な?」

「正解。キスいる?」

「だめ」

 義妹が遮る。ちぇっ。


「唯一神」

「日本って八百万信仰でしょ」

 にわかクリスチャンの幸平が質問する。

「土着ならね。こっそり『こんにちは〜』って入ってきたら?」

「無害なら神様の一人か、くらいですませてしまうのかな」

「鷹揚と言うか無関心なんだよね」

「そんなもん?」

「無害な上に勧誘もしなければ、一族でなんか祭祀してるけどまあいっかってなる。たまたま争いがあった時に中立のグループがあって美人な姉さんがいたら…」

「頭かかえる」

 違う、違うそうじゃない。


「擁立ですか?」

「神輿は美人がいいでしょ?」

 うわ、いやだと義妹は顔をしかめる。自分が美人な自覚あるんだ…。幸平の嫁綺麗だもんね。

「そんでタイミング悪く担がれた後で自分の男が亡くなってふぬけになったら…」

「まわりに悪いやつがいたら、力を悪用するよね」

「そゆこと」

「どこにでもありそうだけど…どこの国の神話?」


 私は答えなかった。

 旧事紀伝とか他の書伝にあったヤマトの実話。

 記紀以前の幻の書物たちが、ここでその一部が伝えられていること。

 神社に伝わる古文書が比較検討されるべき古さだと言うこと。

 宮司家が自分の利益を独占したいだけで、世に公開してこなかったこと。


 あまりに人間的で生々しい。

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