葉の危機感6&その後の二人
翌朝。
きちんと足を揃え、千種ちゃんの両親にご挨拶をする。
「突然お邪魔した上に大切な娘さんな非礼を働き申し訳ございません」
「気にしないで。いつかあなたは千種のお姉さんになるんでしょ」
「あの通りのまだ幼さですので」
「らしくないな。葉くん」
この人たちは高校生の私を知っている。
「そうですか。それでは私事なんですが」
「もったいぶって『結婚』しますくらい言わないと驚かないぞ」
「ご報告が遅れてすみません。一年ほど前に結婚『しました』」
ニコっと。
「近いうちにきちんとご報告に参ります。幸平にはできれば何も聞かないでいただけると幸いでございます」
二の句が出ない二人。
「今すぐにでもご紹介ができますけど」
パネルを向き
「今この場だと、いささか本人も不満でしょうから」
ではと辞し、目的地へ向かう。二人には千紗さんが会う手はずだった。
一方葉宅前夜。
千種が泣き疲れて黙りこむこと2時間。
俺は混乱の解決法をふたつ用意しようと決めた。
「どこか行っちゃおうか」
やっと千種が話す。
あり得ない選択肢だ。
一つ目を選ぶ。まずは虚を突くことだ。
「これ見てくれ」
美也子の呪いのメッセージを見せる。怖がりはしなくても驚きはするだろう。
「うわ…………。本気の子?」
千種の答えはいろいろにとれる。普段はもう少し相手の理解度を推し量って表現するはずだ。
俺が千種を気に入っている特徴のひとつ。
だから俺が代わりに推し量る。
「いつもいつも………。はっきり書けばいいのにね」
「構ってほしいのかしら?」
「それはあると思う。なんせ先月まで中二だったから」
「そういうこと?」
笑う千種。
「あとざっと20通ほど」
「親戚だっけ?和田さんの?」
千種も把握できるくらい少ない親戚。
「ああ。六条家の今はひとり娘」
「へえ。そう言えばさ、葉さんこの子のこと嫌ってるって幸平言ってたよね?」
「自分よりポテンシャルの高い女は敵、嫌いなんだってさ」
「嘘、あの葉さんが?」
「信じられないけど、な」
「共感できるかも」
「嘘だろ、嫉妬してるの?千種が姉ちゃんに?」
「一方的なら止められないよ。幸平があたしと葉さんを比べたらとか思うとあたし嫉妬する」
「千種は誰にでも噛みついているだろ」
「はあっ!?他の人に嫉妬するのはあたしの性格。葉さんに対するのとは違うもん」
「なにそれ」
「女のプライド」
「よく分かんない」
「人類って性差をなくしたら進化できるのかな」
「ちなみにさ、毎回画像送ってくるんだ。削除しきれない」
「見せて」
美也子の画像を見た途端、清姫に器用に進化する千種。この蛇娘が。




