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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第1章:最弱選手権者

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前夜と前刻、そして全国

 結局コーチは夜遅くと言うか朝早くホテルを発った。僕の決勝が終わるまでは残ると言ってくれてたのだけど、僕は辞退した。そしてそれぞれにコーチは僕の前地元、僕は新しい土地へと向かうことになる。


 明後日から僕は隣の県の高校に通う。小学校卒業まで住んだ県から中学入学で東隣の県、高校はさらに東隣となる。


 前夜、二晩目のホテルのロビーで、コーチと決勝までの過ごし方、アップ方法を再確認していた。

「緊張するなら思いっきり緊張していいから。万が一にも幸平には必要ないだろうけどな。普段してることをひとつずつ、同じようにすればいい」

「好きな曲を聴けばリラックスできますかね?」

「いいと思うぞ。俺は彼女に優勝報告することを想像していたし」


 それを聞いてしばらく無口になりそのまま明日を思いやっていると、ふと今日は曲を聴くのを忘れていたことに気付く。やっぱりいつもとは違っていたんだろな。


「そろそろ寝ないとな。起きたらしばらくお別れだ。そしてありがとう」

 コーチは深々と頭を下げた。真摯を姿にすると今のコーチみたくなるんだろうか。その意味が理解できるようになったら、またコーチに会いに行こうと心に決めた。なるべく決まりごとを作らないようにしてるけど、大事なことだけはちゃんと胸の真ん中に。

「娘さんの写真見せてくださいね」

「おう。幸平も決勝の結果、それと帰り…じゃなくて新しい家までの電車に乗ったとき、家に着いたときに必ず連絡くれな」

「コーチ、家に帰るまでが」

「ああ」

「「決勝」だ」


 翌日。

 ぼうっとするような穏やかな晴れの下、競技場に着くと昨日と同じ場所に陣をとる。しばし待つとKさんがやって来た。相原コーチの知り合いで、やはり付き添いで来ている他県のコーチだ。貴重品類を預けルーチンのアップを招集時間に合わせる。

 調子はいい。もしかすると昨日よりいいかもしれない。


 気持ちも落ち着いている。イヤホンに頼ることもその時まで必要なかった。だからこそイヤホンを今回持ってこなかったことを気付いたのが、招集時間の少し前だった。すがるんじゃなくて、ポジティブな活用。

 わずかに欠けたピースを誰かがイヤホンを届けてくれることで埋まった感じがした。

 今からの競技よりも、現在見ている周りの風景や雑音、この瞬間を生涯忘れないようにしよう。

 そう決めるとすっと心が軽くなった。

 終わったら結果を一番に誰に伝えようか。



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