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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第3章:ツガイ

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まだ『思い出』いるかな?

「ごめんなさい」

 二人は頭を下げた。若葉とヒメさんだ。きちんと謝られると申し訳ない気持ちになる。

「失神より気持ちのいい睡眠に見えたけど」

 マロさん、鋭いですね。

 1週間の接触禁止が解かれて夜な夜な行朝さんによる熱い解説に付き合っていた。

 なんとなく気まずい気分で寝ていた場所から起き上がろうとすると、後から抱きしめられた。

「馬鹿、なにやってんのよ」

 甘い匂い。


「用事は?」

「問答無用でお父さん呼んだから」

「マジか」

「二人とも今夜はお母さんからありがたいお言葉いただきなさい」

「俺も?」

「当たり前でしょ。お母さんが一番心配したんだからね」


 若葉が千種に話しかける。

「あなたA組の早名さん?」

「そうですけど」

「あなたたちだったんだ」

 聞けば入学早々バカップルがA組にいるらしい、それがとんでもない美人と寝て動かない男だと。

「えらく正確な噂だね」

 ヒメさん、カットイン。

「ベタつくわけでもなく、ただやたらに美人が甘えてるだけだって話だったけど」

「正解だね」

 ニシシとヒメさん。


 あ、千種が固まった。

 傍らで

「千種を固まらせるなんてやるね、ロリ巨乳」

「よく分かんないけどこーちゃんの友達?ロリババア」

「こーちゃん?」

 千種が俺を指差す。人を直接指差したらダメって教わらなかった?

「ya I’m こーちゃん」

「友達の旦那だよ、巨乳」


 俺は千種に若葉を教える

「幼馴染なんだわ」

 少し考えて千種は

「ああ、若葉ちゃん?」

「え?」

「知り合い?」

「葉さんから聞いたことあるから」

「あなた総代でしょ」

 小声で千種は

「そうだけど」

「こーちゃん以上ってすごいね」

 苦笑いして言葉を返さない千種。気にしないように若葉は続けて

「こーちゃん学校で一番頭が良かったんだよ。小さな小学校だったけど」

「まだ『思い出』いるかな?」

「…………ううん」


「安心して。あたし彼氏いるから」

「え、そうなの?」

 ちらりと千種は俺を睨む。

「そっか」

「そろそろ行くね。こーちゃん今日はほんとごめん」

 続けて

「あ、忘れてたけどこーちゃん、早名幸平だったよね。変わってない?」

「ずっと早名幸平じゃない」

 千種が答える。

 何も言わず若葉は部屋を出る。

 室内プール棟を背にしてやっと言葉が出てくる。

「ダイエットしたくて教室に行ったら幼馴染に再会しておまけに即失恋した件」

「あーあ売れないタイトルだなあ」


「さて、ちょっと提案」

 ヒメさんが

「この中でうちがロリババアだと思う人挙手」

 結果を見てヒメさんがため息を吐く。

「最悪、ひとりくらいいるかなって思ったんだけど、まさかの4人ね」

「甘くておいしい店知ってるよ、ヒメ。行こう」

 珍しくどんより淀んだヒメさんを優しくキントキさんが手を引いて3人は出ていった。


 帰り道。

「あたし意地悪なのかな?」

「俺にはすごく」

 千種は俺を無視して

「幸平がもしって思ったら折井さんにもヒメにも優しくできなかった」

「自分の男を守るためなら友達を困らせても仕方ないって思っちゃったの」

 俺が同じ立場になったらどうするんだろう。

 答えのない問題を急に突きつけられ俺たちは言葉少なに帰った。


 ちなみになにか忘れてる気がしつつ千種邸の扉を開けるとそこに母清姫が立っていた。


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