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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第3章:ツガイ

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ひにんします

 近くにあったバスタオルを毛布がわりに橋本にかけてやり、座りこんだ彼女の右に腰を下ろして黙ったまま泣き止むのを待つ。

 あ、昼飯食べて座り込んだら眠い。すぐに終わるかなと携帯も席に置きっぱなしだ。

 そうやってたら眠気が…。


 …「幸平」

 やけに千種の甘い声が耳元で聞こえる。

 いけね。起きなきゃ。

 窓からはすでに夕方の色の光線。

 をバックに般若のなにか。それで横から重みが。

 あれ、まだ橋本いた…………んだ、そうですか。

「ひにんします」

「ひにんするようなことしたの?」

「否認します」

「避妊したんだ」

 千種と平行線のままだ。


「わわっ」

 橋本が飛び起きた。あどけない表情。

「千種泣かせないでって頼んだよね」

 ヒメさん怖いっす。そしてなぜ俺に。

 寝起きにヒメは怖い。新しい御伽草子書けるかな。

 現実逃避してると、

「ごめん。聞いてた」

 千種が頭を下げる。

「うちが強引に連れてきたからだけどさ」

 要するにあの場に二人いたな?

 その後もマロさんやキントキさんを休憩時間ごとに派遣してたらしい。

 気持ちよく寝ていたから全然気づかなかった。


「千種は二人で帰って。ゆなはあたしたちと帰ろ」

 ヒメさんの采配が早い。橋本に

「大丈夫。甘くておいしい店知ってるから」

 バチバチと両目で…ウィンク?しながら伝える。「なにその顔」

 たまらず吹き出す橋本。

 その後千種に向かい

「ごめんね。幸平くん返すよ」

 無言で見つめ合ったあと、千種はニコリと

「役にたった?」

「千種ちゃんさ、もし幸平くんと別れたら」

 付き合ってないけどな。

「あたしにちょうだい」

 物でもないけどな。

「あげないよ」

 橋本は千種に近づくと耳元で

「愛人でもいいよ。あたしお母さんとは違うみたい」

 と残して4人で去っていった。そして唖然とする千種と俺だけが残る。


 帰り道。

「また寝てたね。しかもサボり」

「面目もない」

「悲しいのかなゆなちゃん」

「分かんね。なあ、千種?」

「あたしの反抗期は中学の頃かな」

「俺の心読めるの?」

「親への反抗心ってどんな感じなんだろうな」

 千種は俺の右腕をぎゅっと巻くと、

「お父さんに『うるせえ、この馬鹿オヤジ』って言ったら少し分かるんじゃないかな」

 俺は行朝さんの体格を思い出してブルっと身が震えた。

 この町の夕方はまだ少し寒い。


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