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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第3章:ツガイ

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黒船再来

 未経験者に10kmの遠泳をさせるような困難を俺が終えて携帯から注文したのは、千種が朝食の準備をしている最中だった。俺が条件反射のように布団に向かって歩き始めると

「もうできるから落ち着いていて」

「今日は日曜日」

「明後日は水曜日よ」

「ゴミ捨てないと」

「ゴミ出しだけはマメよね。あと二日頑張りなさい」

 そんな大好きなイベントだっけ?


 染みるようなみそ汁をいただきながら

「また味が違うな」

「合わない?」

「寝不足の今はこっちの薄味がいいかな」

「良かった。よく寝た朝は千紗さんの濃い目が最高なんだけどな」

「幸平、お母さんの味付け好きだよね」

 行朝さんとは年齢も体調も違う。数日前に俺が作ったみそ汁は千種師匠直伝の標準的な味だった。

「たまにならね」

「あたしはお父さんのが好きかな」

 実は行朝さんのみそ汁をいただく機会が一番多かった。

「帰りにスーパー寄らないと」

「野菜足りない?」

「今夜ギリギリ」


 今日から本格的に授業が始まる。私学になって数年。この学校は進学校として売り出すつもりのようだった。

 教室に入り自分の席に着くと隣の席の千種を迂回するように背後から声がかかる。

「おす、幸平」

 沢村。声とともに軽く右手のグータッチ。

 反射的に俺も右手を合わせる。相原コーチの癖だった。

「よ」

「眠そうだな」

「朝まで仕事あってさ」

「何やってんだ?」

「野暮用」

「そか」

 沢村って千種に興味もたないし、あっさりしてることが多い。

 そのうち太閤さんも混じりくだらない馬鹿話が続いた。千種は斜め前のヒメさんとやっぱり楽しげに話していた。


 午前中の3コマはいきなり教科書から始まったり、雑談に終始したりと先生の個性によった。ただやはり内容はレベルが高そうだ。進み方も早そう。


 昼休み。だんだん千紗さんと千種の作ったものの違いが分かり始めた昼飯を終えた頃、不意に橋本が現れた。土曜日の集まりでも話題に出ていたし、やはり日本3位は十分インパクトがあるらしい。なんとなく注目が集まってる気がする。

「千種ちゃん、幸平くん貸して」

「早く返してね」

 あ…橋本との交渉すっかり忘れてた。

 目立つ金髪に連れられて俺は教室を後にする。

「千種………いいの?」

 じっと見ていたヒメが千種に問う。

「ゆなちゃんにも……幸平が必要みたいだから」

「ずいぶん寛大だねえ」

 驚くようにヒメは伝える。そしてほんの少し間をおいて

「幸平くんに付き合ってってもし言われたら」

 千種も驚いてヒメを見る。

「うちもまずは『考える』かな」

「え?」

「まずは幸平くん。次に千種」

 ヒメは笑った。


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