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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第2章:始まりはいつも録画

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早名女

「驚いたな、幸平。俺や秀吉を抜くやつ久しぶりだ」

 3on3を終えた後、10年来の友人のように沢村が

 話しかけてきた。スポーツができると上位みたいな価値観がまだ田舎の初々しい高校生には残ってるんだろうか。

「さすがロードワークが趣味だよね」

 誰がそんな個人情報を………あ、自己紹介でしたな。

「スピードも切り返しも予想以上だったぜ。つーかだんだん本気になってたよな?」

「僕らのレベルに合わせてくれてたんだよ。分からなかった?光秀」

「うえ、そうなのか?幸平」

 沢村は嫌そうに顔をしかめた。

「バスケ経験者?」

「しがない村人Aだよ」

 女子を混ぜていたから、緩い遊びだった。ガチでやれば時間経過とともにスタミナロスで一歩も歩けなくなっていたに違いない。沢村も田中も高校で運動部を選ぶくらいだから、その辺はとっくに見抜いているだろう。

 ローテーションしながら全員が一度は仲間になると言う見事な采配をしたヒメさんは、次にカラオケだと宣言した。食べながら歌いたい人だけあたしと田中くんがマイクを渡すからねと、自ら奉行を買ってでていた。

 見事な裁きだ。太閤さんはびっくりしていたけど。


 カラオケ階に二部屋をとり、予約していた人数分の共通メニューが届く。一旦全員で乾杯…まあソフトドリンクだね…した後、半分が別室へと移動する。千種は…別室か。いつもべったりしてるからとヒメさんなりに気を使ったんだろう。


 ところでプレイをしながら女子に二種類タイプが分かれるのに気がついた。たいがいボールを受け取ってからどうしようかと目で周辺を確認するのに、数人はあらかじめ決めていたように躊躇なく動き出すのだ。不思議なのはその特徴が技術の巧拙に関わらず、と言う点だ。それは控えめに言っても、決断力を意識的に鍛えられているように見える。あの美也子でもこの分類なら一般人になりそうだ。


 その数人の一人、日下部さんと言ったかな?が隣にいる。

「さすが千種の彼だね。運動神経いいんだ。びっくりしちゃった」

「最後グダグダになっちゃったよ」

「ふうん」

「そんなに不幸でもないと思うけど」

「あ、千種と相性がいい理由分かった」

「へ?」

「千種ああ見えて冗談が好きなのよ」

「そうなの?」

「そうやって隙を見せて相手を縛らないのが千種はいいのかもね」


「ね、早名くん。早名女(さなめ)って知ってる?」

「早乙女みたいな、名前?」

「早名女のツガイだよ」

 あ、またなんかツガイ。

「あたし馬鹿だからうまく説明できないけど」

「なんか難しいこと言ってるじゃん」

「んー、早名くんて千種の前の家に住んでるでしょ」

 田舎でこの程度の個人情報はオープンだよな、たぶん。

「あ、うん」

「早名の本家だよ」

「一週間前に来たばっかりなんだ、初めて聞くよそれ」

「あたしのお母さんが早名でさ。早名くんとは半分親戚かな」

 そう言って日下部さんは笑った。

 いったい何人親戚が増えるんだろう。いや冗談でなく。

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