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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第12章:

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美也子の祝福

「義兄さんが来ると居場所がないような気がする」

 美也子がさめざめと訴えてきた。千種邸にふらりと火曜日にやって来た。と言うか千種に付いてきたらしい。だいたい先生の部屋2LDKだもんな。いくらなんでも新婚の二人といたくはないだろう。


 美也子の訴えがまとも…つまり俺は対処しなければならないのだろう。

 涙目の美也子を見てるとずいぶん変わったもんだと思う。今は中にトヨさんと言う人がいて、美也子の自我と対話を重ねているはずだ。


 千種のときとは違い、まわりになんの影響も与えないのは、不思議でもあり、そのトヨさんの個性なような気もする。なんせ参考例が千種だけだから、なんもわからん。


「姉妹で仲良く暮らしてみる?」

「やーだー」

「なんでだよ?千種なら安心できるだろ?」

「先輩たちだって新婚じゃん」


 あ…。そう見えるのか。

 うーん、さて。

 六条の実家に戻れるならこんな相談は最初からないだろう。


 横で聞いていた千種は、

「それなら前の家にする?お母様の実家だよ」

 意外だったのだろう、美也子は無表情なように固まった。

「今大杉くんと美樹さんが住んでますよね?」

「ん。あちこち移動するの大変だと思うけどどう?」

「うーん…」

 と考え込んでいる。


 と、千種が

「週末だけ来る?」

 と妥協案を提示した。

「金曜日の夜から月曜日の朝ならそんなに誰も負担にならないし。もう推薦は?」

「決まりました」

「それならいっか?」

 まあ、それがいいのかも。日向さんだってずっとこっちにいるわけでもないだろうし、用事だってたくさんあるだろう。スター中のスターだしな。


 …などと甘い考えを依田日向さんは許してくれないらしい。

 翌日。

「なんか全部予定を断ってずっといるらしいんです」

 再び考える俺と千種。今夜はいい案も出ず、二人ともなんとも重苦しい雰囲気だった。


 さらに翌日。

「また来たのか?」

「また、とか言わないの」

 あ、美也子のやつピースサイン出しやがった。しかも千種に気づかれたし。

 美也子、おまえ受験勉強いらなくなったから暇なんだろ!

「ばれました?」

「なんでこんな冗談を…」

「いたくないのは事実です」

 それじゃ堂々巡り、だ。


「千種先輩!」

 勢いにタジタジとなる我が妻。

「少しくらい仕返ししたかったんです」

「どうして?」

「旦那にしちゃったから」

 美也子なりの祝福なんだろう。

 すっごく分かりにくいけど。


 千種がこめかみに青筋を立てている。こんな分かりやすい怒り方初めて見たぞ。

 きっと明日から練習がきつくなるんだろうな。


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