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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第13章:新しき人々

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出入禁止令

 翌朝、どうしてだろう…プール出入禁止令が千種から発された。

 あまりの横暴さに抗議したい。

 千種に会えないじゃないか。


「その時は入れてあげる」

 どうしてそんなに?

「あなたいろんな女の子と関係もちすぎ」

 すっごく納得いかないんですけど。

「そんなに言うなら、あたしと()()次の日ならいいわ」

 高校生男子の底力をみくびるなよ。

「じゃあずっとダメ」


 昼休み、昨日の返事をしがてら体育準備室を訪れる。ついでに千種の暴挙を訴えたい。

「先生聞いてく……」

「あらあ、早名くんじゃない!」

 なんだ?とんでもなく上機嫌の先生。ずいぶん昨日とは違って弾むような感じだ。

 これは…依田さんがこっちに来ることになったからに違いない。良かったなと、

「依田さん、いつ来るんですか?」

「来週よ」

 もうシーズンオフだもんな。依田さんは夏以降セットアッパーを務め、リーグ優勝に貢献した。防御率は1点台、時にストッパーすらこなして、球速を150km台にのせていた。惜しくも日本一は逃したが強気な剛腕として、あらたなファンを獲得している。ちなみに義兄、晶さんは途中不運な離脱はあったものの、首位打者、打点王の2冠に輝いた。


「いつまでこちらに?」

「自主トレを始めるお正月明けくらいまでかしら」

 おそらく先発と中継ぎでは疲労の仕方も違うだろう。こっちは山国だから温泉も数多い。いい休養になればいいなと思う。


「薫さんに教えていただいていて良かったわ」

 …ああ、大前監督への紹介?はそのお礼とでも言うべきものなのかもしれない。

「大前さん、頭いいのね」

 と、姉と同じ出身大学をあげる。へえ、あそこからプロに。

「今は本職がリハビリの医者(せんせい)なんだそうね」

 確かそんなことを言っていたような…。有給へのこだわりとどう関係するかは知らないけど。

「夫に紹介するつもりなの」

 監督は元プロだ。良い相乗効果があるかも。


「ところで昨日の件ですが…」

 先生は浮かれた調子から改め、真剣になる。

「突然にごめんなさいね。ほんと無理しなくて…」

 それがですね、と訪問の核心に入る。

 実はですね、千種に出入禁止を言い渡されまして…。

「なにそれ」とたまらず先生は笑う。

 それがどうやら本気みたいで。

「どうしてそんなことに?」

 北玲を信じるからこそ、最近あったことを隠さずに話す。

「私は個々人のプライバシーを管理するのは反対なのよねえ…」

 つまり不介入と?

「そこまで徹底的ではないけど…恋は叶っても破れても、意味のないことではない、うーん…そう思うんだけどな」

 さすが純愛マスターです。

「やだ、うまいこと言ってぇ」

 それでですね、俺もプールに入る名分を持とうかと。

「へえ…どうするつもり?」

 やだなあ。先生が昨日提案してくれたじゃないですか、男子チームが発足するから手伝ってって。


「え?じゃあ」

 参加させてください、男子チーム。嫁に目にもの見せてくれようぞ。

「喧嘩したわけじゃあるまいし。まあでも意見をぶつけなきゃ成長の余地は少ないわよ」


 北玲は教育者、だ。

 ということで、千種に内緒で参加が決まる。あくまで水泳教室の男子チーム()()()として。

 なんか野球部と似た境遇だけど、まっ気のせいだ。

仲の良い二人でもそれぞれの世界がある方が健全だと思います。

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