児島さゆりの回想
あたしの目から見たみさちゃんはなんでもできる器用な子だった。小さい頃から通っていたスイミングでもあっと言う間に一番になって、大会に出ては賞状を何枚ももらうくらい優秀だった。
双子なのにあたしは鈍臭くて。いつまで経っても水が怖かったり、やっとそれを克服しても泳ぐことは下手で。
それでもみさちゃんはあたしを馬鹿にしたりしないで待っていてくれた。言葉でははっきりと言わなかったけど、苦しい時も悲しい時もやっぱりいつもみたいに、いたずらっぽく茶化しながら手を繋いで帰ったものだ。
初潮はあたしの方が早く、(体ばっかりみさちゃんより大きくなって痛いことばかりあたしが先に…)と何かを恨んだりした。
勉強は…正直似たりよったりだったから、コンプレックスは感じないですんだ。それでもやっぱり少しだけみさちゃんの方が上だったけど。
水泳だけは、なぜかあたし諦めなかった。みさちゃんが待ってたから。それに何年も続けてると自分の中だけで比べて確実に泳げるようになっていくことが楽しいと思えるようになってもいた。
中学の最終学年になる頃、みさちゃんは既にトップ選手でみんなのあこがれだった(大杉美樹ちゃんも自分がトップクラスでありながら、やはりあこがれだった、と後で聞いた)。だけど夏に親が転勤する、東京から山国へ引っ越す話を聞いてあっさりとみさちゃんは一緒に行くことを選んだ。そっちにはスイミングがなく、必然的に辞めることになる。それでいいのだろうか?と疑問に思い聞いてみたら、
「りく と くんの相手しないとね」
と笑い、
「ね、どっちの面倒見たい?」
とはぐらかすように逆に質問された。
比較的気質が似ているりく、と答えると
「じゃああたしはくんね」
と衒いすらなく同意したのだった。
みさちゃんは暇ができたからか、化粧を覚えますます綺麗になっていく。そうして高校に入学してあたしたちはりくやくんに勉強を教えながら、毎日を過ごしていた。みさちゃんはもててたくさん告白されたけど、一度も首を縦に振らず断るばかり。
ある日校舎の横に室内プールが建設されていることに気が付いた。入学の時に「来年公立から私立になる」と説明があったけど、その一環だろうかと話しながらも、みさちゃんはその建物から目を移すことはなかった。
学年が上がりやがて室内プールに市が主催するいくつかのコースが設置されると、
「ね、行こ」
とみさちゃんはあたしを誘ってくれた。
嬉しかったのは言うまでもない。
そしてその初日、金髪の切れ長の目をした美人、これまた腰まで届く長い綺麗な髪をした落ち着いた女の子、二人に挟まれ苦虫を噛み潰したような表情をする男の子がいた。
橋本結菜さん、早名千種さん、早名幸平くん。
三人は眩しく、友達になりたくなった。
まだまだ続けますが、一応センバツをもって区切りにします。幸平くんが進級したらフェノミナン2ndにして新たに書こうかと思います。最低でも卒業までは書き上げたいですね。




