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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第13章:新しき人々

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当たりくじ

 正直に言うと…北玲(この人)に限界があるなんてこと考えたこともなかった。

 ずっと自己記録を更新して、再び日本水泳界の真ん中に位置するものだと…勝手に思っていた。


 瞬時に頭が回転する。

 帰国。赤い髪。プール破り。無職。教職。チーム発足。指導。

 すべて繋がる。

 これほど近くにいて、この人の苦悩など思いもしなかった…。

 どれほどに…。


「あなたほんとに頭がキレるわね」

 先生はあっさりと笑う。

「同情した?」

「いえ…見たことのない高みですし」


「そういうところに早名さん惚れちゃったか」

 さらりと先生は話題を変える。

「来年ね、男子チームを発足させる予定なの」

 え?そうなんですか?

「だからあなたにまとめ役をお願いしたいと思って。それが今来てもらった理由」

 え、俺野球…。


「だからね、まずは話し合い」

 どういう…。


 と、その時準備室のドアがノックされた。

「いい…タイミングね」

 どうぞ、と発声する先生。

「準備室ってここかい?」

 入ってきたのは大前監督。

「北玲ってあんたか?」

「はい。わざわざご足労いただきましてありがとうございます」

 非常に丁寧に先生は大前監督に頭を下げた。


「いいよ、いいよ。天下の北玲に頭下げられる理由がねえ」

「いえ、そういう訳には…」

「なんで早名がいる?」

「…彼のことでご相談が」

「早名のこと?」

「ええ、実は…」


 先生はかいつまんで要点を話す。

 次第に険しい表情になる監督。

「…そのような理由で早名くんを男子チームに入れたいとお願いしたいのですが」

 無言で上を見上げずっと考えこんでいる。


「早名のことはな…羽田から預かったもんだと思ってた」

「羽田、さんですか?」

「こいつの親父だよ」

「どういうご関係で?」

「ああ、俺は二軍のまま引退した元プロだ」

 意外だったのだろう。先生は言葉が見つからないようだ。

「こいつの親父と同じチームの二軍で一緒に過ごしたことがある。羽田は少しずつ成長して首位打者とったりしてアメリカに行ったがな」

「そうだったんですか」

「割と気が合ってよ。印象深いやつだったから、やつの子供とまた野球するってのがなんだか因縁のような気がしてたのさ」

「私は彼に無理強いしようとは思っていませんので、そこはご理解ください」

「そりゃまあ、な。本人次第だとは思う」


「あんたとは微妙に縁があるのかもな」

「どういう?」

「引退した後少しだけスカウトをしてたことがあってよ。最後の年は俺がくじ引いたんだよ」

「少し羨ましいことです」

「あんたの旦那、依田日向だったよな?」

「ええ」

「俺が人生で一度きり引いたくじってな」


「遊佐晶だ」

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