父に似た
「千種ちゃんの確約がとれたからいっか」
どうやら児島家の心配はひとまず矛をおさめたらしい。
「じゃあさ、幸平くんに千種ちゃんが飽きたら、幸平くんをあたしに…」
「わ、わたしも…」
千種はこのやりとりに苛立ったのか、
「幸平はあたしに満足しています」
「体が?」
「体も、です」
はあ…。
千種や橋本が入学する前は、この姉妹が学校の一番人気だったと聞いたことがある。それくらい飛び抜けた美人姉妹のはずだったのだけど。
千種があまり放課後プールに俺を誘わない理由が分かった気がする。
折井がいるとは言え(最近なんだか千種と折井は仲が良い)、野球部に放り込んでおいた方が、千種は水泳に専念できるのだ。もっともマリー・スティーブンスさんが本格的に関わるようになるらしいから、千種が今後どうなるかは分からないのだけど。
・・・
「幸平…あたし心配なんだけど」
姉妹と別れクラスに戻る途中で千種は話す。
心配?千種がなんか心配することあるのか?
「あたしがいないと幸平、絶対女の子に刺されるよ」
怖いこと言うなよ。
「幸平にその気がなくても、勝手に寄ってくるし」
そりゃ千種が横にいるからこそ、たまたま俺でも良く見えるだけだろ?
「ほんとにあなたは…」
だいたい背も低いし、顔だって…。
「美也子ちゃんがいとこで、華さんが叔母さんでしょ?あなたのお母様とはお会いできなかったけど…」
まあ…運としか。
「お母さんが言ってたけどね」
千紗さん?
「華さんも美也子ちゃんもとびっきりだけど、一番は…」
………。
「あなたのお母様だって」
もういないからな。昔の…話だよ。それに誠心さんからは俺がは親父似だと…俺はそれが嬉しかったんだ。
「あなたほんとに自分に無頓着」
そういうおまえもな。
「どうしてあなたに女の子が寄ってくるか、分かる?」
なんかフェロモンでも出てるからか?
「比較的綺麗にしてるよね」
臭いって遠回しに言ってる?
「あなたの匂いはあたしが知ってる」
そりゃ毎晩横で寝てるから…。
「あなただけの匂いだと思う?」
俺、千種の匂いも撒き散らしてたり?
「あなたもうオスなのよ」
んじゃおまえだってメス…。あぁ、そうだな。案外そうなのかも知れない。
「あたしたち微妙なお年頃でしょ?」
男は言わない方がいいとは思うけど、まっ確かに。
「幸平、激しいし」
いや、面目ない。
「つまりはそういうこと」
非常に説得力のあるお言葉ありがとうございます。恙無く…今後は?
「あたし以外ダメだからね?」
十分留意の上…
「はい、って言いなさい…バカ」
珍しく肩に力の入っていない千種ちゃん




