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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第13章:新しき人々

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ペンギンの方が

 smile to the world(世界に笑顔を)

 非常に厳しい現実だ…だけどシニカルな厭世家にはなれないし、裏で欲にまみれた偽善家でいたくない。

 ため息のでるのをおさえ、できあがったばかりの動画を見終わった。オリンピックの分科会が中間年に出すメッセージとして適切だろう。

 マリーは自らの役目が終わることを意識する。

 次の会議で退く…理事の改選に立候補することはない。競技からは既に離れた。理事を終えれば、本当の意味で引退となる。


 わずか30秒の動画をもう一度見直す。これが最後でいいのか…と。世界の若いアスリートが笑顔を引き継いでいく。日本のパートで若い少女がプールから浮かび上がり笑顔を引き継ぐ。

(そうよ、あなたに引き継ぐ)


 はた迷惑なマリーの思いは美也子の知るところではない。放課後のきつい練習から解放されたはずなのに、先生の部屋に帰ればもっと怖い師匠が待っている。


 なんでこうなったかなあ…。

「お母さん聞いて」

 今日も母、華に愚痴を零す。

「先輩の発案らしいんだけど、自分たちでバランスの取れた食事を理解しないとダメだって、怖い師匠に料理を作らされるの」

「あら、こっちに帰ってくる?」

「て言うか元々来なければ良かったような」

「美也子」

 ビクッとして姿勢を正す。

「決めたのは誰?」

「…あたし」

「いつでも帰っていらっしゃい。でもいるからにはきちんとやるべきことをしないと」


(なんか怖い人ばかり増えている気がする)

 ほんとに、なんでこうなったかなあ…。


「切り方はもういいわね」

(水泳は分からないけど、包丁の使い方もあっと言う間にうまくなって)

 天才的な料理人になれる素質を持っている…。

 薫は美也子をそう評していた。

 問題は本人のその気である。


 それに比べて…。もう一人の不器用さときたら。

「どうしてこうも大きさが揃わないのかしらね」

「えーと…あはは…」

「あなた旦那さんも有名な方なんでしょう?」

「南極越冬隊だって知ってますよ!」

「ペンギンを奥さんにした方が旦那さん幸せじゃないかしら」

 この女…とばかりになんらかの悪意を込めた目で玲は睨む。

「夜ばっかり達者だと旦那さんは不幸よね」

 もう西の(みやこ)独特の当てこすりでもなんでもなく、ただの悪口だ。


 涙目になる玲。

 携帯が鳴る。日向のようだ。

 玲はぐずりながら助けを求め始めた。

(ほんとに可愛らしい)

 どんな経緯か聞いていないが、ずいぶん長いことお互いを待ち続けていた、と聞いている。

 強い女が満たされてるわけでもない。


 誰も得をしない絵図が、今夜も遅くまで続く。


まあ二人とも確実に料理の腕は上がっています。弟子の幸せはお師匠さん次第。

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