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ツガイの効能

きっかけは友達に借りたノートを返すのが1日遅れたからだと橋本は話した。

たまたま練習で疲れたから眠ってしまってきちんと友達に連絡もして了承をもらったはずなのに、

気がついたら約束にルーズ、だらしないと陰で悪く言われ後は無限の負のループ。巧妙なイジメで骨折までしてしまったとのこと。

そう言えば一年ちょっと前に同じスイミングの同種目の女の子が「橋本さん、この間の大会にいなかったけどどうしたんですかね」とコーチと話していたのを思い出した。

「中学も転校したんだけどやっぱり地元だから噂が早くて」

「腫れ物扱いだもんね。進学決める時によく知らないけど親にこの学校を薦めてくれた人がいて。家も裕福じゃないから特待でーーー自慢に聞こえたらごめんなさい、でも負担なしで新しい学校の宣伝になるからとはっきり言われても、あそこにいるよりは…」

「ここに来たかった」


苛烈な内容だった。噂話でもそこまでひどいイジメを俺は聞いたことがなかった。おそらく他の4人も同じことだったろう。

「うん、分かったよ」

ヒメさんが話す。

「もう友達。ゆなは私たちの友達」

男前ですよ、ヒメさん、かっこいい。

「私たちから男をとってもいいくらいに友達。ただ千種はね。千種だけは泣かせないでね。それだけが私のお願いすること」

いつしかもらい泣きしてたマロもキントキもうなずく。


ゆっくりと目を瞑った橋本は

「ありがとう。友達になってください、みんな」

一気に言葉を吐き出した。

それぞれにうんとうなずく面々。

俺も参加しようと

「俺もみんなの友達になりたい」

橋本だけがうなずいたけど、ヒメさんが

「早名くんは千種の旦那」

「それどういう位置?」

「ツガイの片っぽ」

最低の理解だな、おい。


帰り道。

「ツガイってなんなんだろうな」

みんなと別れて千種と二人だけの夕方。

「さあ?」

「なんか動物が子孫を残すための最小単位みたいに思っちゃうよ」

「方言って分かるよね?」

「もちろん」

「ニュアンスが難しいんだけど…理想じゃなくても見つけ得る最良の相手を見つけた二人のことをさすっていうか…」

「そんな意味あるの?さっぱり分からないよ」

「長く住んでみないと分からないよ。あたしも正直分かったフリをしてるだけだから。だけどまわりで使っているツガイの人ってみんな幸せそうな感じがする」

祝福の呪文かなんかか?俺は首をひねりながら帰るのだった。

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