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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第11章:秋のできごと

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終盤

 7回の表。三番からだ。

 いい当たりと申告敬遠。まだ勝負らしいことはしてないけど。

「ピッチャー田所くん。キャッチャー袋井くん。セカンド早名くん」

 アナウンスが響く。

 今日一番の歓声。と言うかどよめきだな。

 球の速さだけなら田所か俺か。本職キャッチャーだけあってコントロールなら、上投げの俺より正確だ。川上と田所がキャッチボールしていたが、田所の方だったか。


 いつだったか沢村が冗談で、

「どうせ本職のピッチャーがいないなら一イニングずつ全員でどうか」と提案したことがあり、巡り巡って今実現したわけだ。

 まっストレートだけしか投げれないのは俺たちだけの秘密だ。


「ベースで分けるか、早名」

 児島が話しかけてきた。守備範囲の確認だ。

「分かった」

 それだけを返す。


 3番に早速ライト前へはじき返される。正直プロ向きなのはこっちだろう。

 続いて4番も強い当たりのセンター前。

 を、俺がダイビングで止めてグラブトス。

 やや高かったが、さすが児島。うまくさばいてダブルプレーの完成。


 あー、千種が立ち上がって右腕を上げたな。隣は行朝さんか。初めて千種に気がついた。


 俺も右腕を触る。


 5番の深いショートゴロを児島は強肩でアウトにした。うまい選手だ。


 8回は互いに走者を出しながら無得点。

 最終回は…川上かと思うと、やつはファーストへ。菅かと見ればセカンドへ。


「ピッチャー早名くん」

 またか。こういうの最後は沢村とか東原だろ。

「夏のバッピのご褒美だ」

 ライトに向かわずマウンド付近に残っていた沢村が言う。

「えらい贈り物だな」

「とっとと終わろうぜ。腹が減った」

「全部沢村の方に打たせるわ」

「頼むぞ」

 笑ってライトに全力疾走していった。


 相手は3安打の一番から。

 田所は上投げのゼスチャー。

 俺はストレートと、まだ投げていなかったフォークボールを交え、3人を打ち取った。


 憮然とした4番の姿が印象に残っている。

 ベンチではずっと声を出し鼓舞し続けた折井若葉が号泣していた。


 ・・・

 宿で迎えた夜。

 全体のミーティングだ。

「明日は9点差以内で負けろよ。あんまり大差だと選考委員の印象が悪い」

 監督はまた身も蓋もないことを言う。

「特に東原と沢村。キャプテン二人を温存したのは明日のためだからな」

 キャプテン二人…のあたり連合チームなのを思い出す。なんかもうワンチームの気持ちなんだけどな。

「よくここまで来た。明日はご褒美だ。先発も打順も守備位置も話し合って好きにしろ」

 なんか今日聞いたような。


 俺たちは話し合い、()()監督に一任することにした。


 翌日。俺たちは5対1で予定通り敗戦した。予想外に点差が広がらなかったのは、その日限りの監督の采配が良かったから…だと俺たちは思っている。


第11章の最終話です。

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