表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第11章:秋のできごと

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

180/209

たくさんの主役

 大前監督がどういう経路でバッピを雇ったのか知らないが…おそらくは夕飯とかそんなんだろう、内容より「奢られる」行為がまだ新鮮な年代だ…彼らは確かに月曜日も火曜日も投げた。

 慣れない硬球にも関わらず確かに余力を残して彼らは投げた。

 それでもずいぶん速い。


「自分で投げて幸平さんのバッピが大変なの分かりました。あんなに正確無比に同じところに投げるなんてできませんよ」

 アドレナリンが出ているのか、太郎は饒舌だ。

「キャッチボールとバッピは大切に、が父親の残した言葉でさ」

「また笑えない冗談やめてください」

 光太郎は別としてロゼ太郎もキャリパーも俺の家族のことは知らない。

「光太郎はさすがにいい球投げるな」

「今年に入って知り合いましたけど、あれで有名じゃないなんて反則ですよ」

「おまえの目から見てもすごいのか?」

「なんかこう…惚れちまうような球なんですよね」

 おかしな表現だが確かに俺も同意したい。キャッチボールさえずっと見ていたい…そんな気持ちを起こさせる。


 ・・・

 二人のおかげか水曜日の初戦は一方的な試合になった。

 ストレートを確実に捉える…監督の指示は明快で、バッテリーは意図を察知して変化球を多く配球し始めた頃にはもう3点をリードしていた。

 球数を投げさせ、4回途中で相手のエースは降板、2番手以降はやや力量が落ちるのか、さらに待球策の餌食になる。宝くじ2枚の長打、下位打線の粘りと相手も予想外だったのだろう。

 川上の投球もなんと言うか。本人も初回から全力投球のつもりでツーシームの連投。速くないのが逆に凡打を誘う。右打者のインコースの球は横にスライドして食い込んだり落ちたり。左打者にはインコースがシュートして胸元へ。乱調気味のコントロールも相手からしたら、老獪な変化球ピッチャーに映ったことだろう。内野の好守備が川上を…田所の配球を大胆にさせていた。


 結果…7対0のコールドゲーム。完封のおまけ付きだった。高校生のローカルゲームでも試合の流れはあるようで、明日また試合したら結果は今日と逆になるかもしれない。

 川上は試合後に尋常じゃないへばり方をしていた。

 そして勝因はやはり田所だろう。


 一泊するホテルの会議場で明日の対策。監督はまず試合を総括して川上を褒めた。

「よく投げた。明日も頼むぞ」

「嘘でしょう…」

「90球ちょっとだ。まだまだ」

「監督、試合と練習じゃ球数の比較は意味が…」

「明日は初回だけな。相手は上位に左を並べるだろうから挨拶がわりだ」

「それと東原、黄田、沢村。3人で外野と投手任せる。多少打たれても今日と同じ打撃なら接戦になる」

「黄田が抜けたらセンターは」

「早名がいるだろ。明日は誰がいつ出るか分からないからな。緊張感を切らすな。それと袋井」

 びっくりしたように返事をする袋井。

「試合展開を予想して俺に助言してくれ。明日限定だがおまえが監督だ」

「ええっそんな」

 誰よりも目を配り、全体を俯瞰している袋井は確かに適任だった。


 主将の沢村?あいつは生粋の煽動者(アジテーター)だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ