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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第11章:秋のできごと

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甲子園まであと3勝

「ローゼさんですか」

 とにかく陽気なアメリカンの風貌。日に焼け、外仕事を生業としてるのかしら、と千種は思った。このプールと教室の実質的な立役者であるとは夢にも思わない。

「息子があなたの彼に世話になっているようで」

 では…と少し考え

「太郎くんの?」

「君が息子のことを知ってると知ったら喜ぶだろう」

「それは」

 否定しようとする前に、マリーと玲の話は終わったようでマリーがトーマスを呼んだ。

「息子が来年ここに来ます。その時にまた」

 彼は軽く手を上げ、マリーと共にプールから出ていった。


 練習後、玲とさくらが質問攻めにあったのは言うまでもない。


 プールを背にしたトーマスとマリー。

『あの中にいた可愛い子』

『みんな可愛いかったが』

『じゃあ一番の』

 トーマスは間髪入れずに

『あの子が?』

『今度のビデオに出るみたい』

『見た目か?』

『その理由が納得できるでしょ?』

 分かる…が気性はきついと息子から聞いていた。

 それよりも、

『ビルに会っていってくれないか?いい相棒だ』

『ええもちろん』


 ・・・

 プールにオーナーが来た月曜日。

 大前監督は野球部の連合チームの面々に気炎をあげていた。

「目指せ甲子園!」

「3回も勝たないと決勝に行けないんですよね」

 珍しく沢村がまともなことを言った。

「希望枠があるだろ」

 センバツには推薦校制度みたいな特別出場枠がある。

「とりあえずまずは初戦だ。相手は隣県1位だが…勝てる!」

「県大会の時はあまり勝つなって言ってましたよね?」

「有給が増えた」

「えっ?」

 監督ってもしかしてダメな社会人なのか?

 俺たちが疑念の眼差しをしてもどこ吹く風で

「相手だが…いい投手だ。打線も粘り強い」

 と分析を始めた。


「裏を返せばそれほど剛腕でない。打線は長打力に欠ける、相手だ」

「いいか?東原も沢村もそこそこコントロールがいい。早名は抜群だ。そこでだ。初戦先発川上」

 ええっと本人が一番驚く。

「後に3枚いるからな、とにかく左にはツーシームを使え。右は打ち損じを信じろ」

「それ神頼みなんじゃ…」

「内野を信じろ。外野には黄田がいる」


「黄田と早名に出塁、盗塁、生還を任せるからな」

「あとは田所、山形。犠牲フライが必要ないときは全部一発狙っていいぞ」


「今回は…進め、進め早名黄田、盗め盗めサナキダ作戦だ」

「なんか犯罪者みたいでやだなー」

 黄田が嫌がる。

「塁を盗んだり、走者をさしたり野球は物騒な用語が多いだろ?そういうスポーツだからな」


「二人には負担を押しつけてすまん。精一杯楽しんでくれ。それとバッピな。今日明日の2日間だけ新人を用意した」

「ロゼと大杉でしょう?速くて当たらないっすよ」

「大丈夫だ。手加減してくれるように頼んだ」


 中学生に手加減してもらうとかプライドが…などと言うやつはいない。

 キャリパーを含む3人が今の時点で規格外なことをここにいる誰もが知っていた。


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