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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第11章:秋のできごと

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あなたと分かち合う

「美也子ちゃん次第でしょうね」

 姉は軽く断言した。


 ミコさんとの話が終わり、忙しい姉に連絡がついたらいいな…くらいの気持ちで電話した。

 すぐに出た。

「幸平じゃなきゃ出ないわよ。一週間待ちだってざらなんだから」

 姉の悪癖…連絡忘れはこうして生み出されていくのだろう。


 ミコさんとの会話の内容をかいつまんで話し、美也子に選択を委ねることに問題はないかと問うと、姉は即答した。

 冒頭のように。


「ああ、それと…」

 和田さん宅の訪問の件を次に話した。


 これだけでも長い時間だ。

「落ち着くところに落ち着いた…わけね」

 こちらもあっさりとした言葉。

「ちょっと待って。姉ちゃん、華さんのこと知ってたん?」

「それとなく、ね」

 じゃあ美也子と俺が従兄弟で、だからこそ身内に近い美也子の才能を羨んで…。

「あまりコンプレックスを刺激しないで」

「…悪かったよ」

 姉の心持ちに触れたのはいつ以来か。


「美也子ちゃんが決断するようなら、すぐに連絡して。それと…相原コーチ…だっけ?進めていいと思う。元さんを窓口にしてね」

 素早い指示を出して、姉は電話を切った。


 さて、大まかな方針は決まった。

 次から次と美也子には辛い思いをさせてしまう。

 せめて憎まれるのも嫌われるのも俺が引き受ける番だ。

「なあ。美也子に連絡して一緒に御地に行く日を決めてくれないか?」

 千種に頼むのは、千種なら体調とかなるべく美也子が負担にならないような日…が俺よりは予想しやすいだろうからだ。


「あなた、全部背負う気?」

「できることなら。でもたぶん無理なことなんだろうと思う。悪いけど…少しでいい。千種、頼む」


「待ってた」

「え?」

 予想外なことを千種は言う。

「はぐらかしてばっかりで、寂しかったんだから」

 ほんとごめんな。できること、自分が覚悟すれば自己満足できることばっかりじゃないことが、世の中にはたくさんあることが、つくづく分かったよ。


「らしくないわね」

 そう言って千種は俺の肩を抱いた。


 ・・・

 千種はいつの間にか美也子に連絡をとり、今週末ならと俺に伝えてきた。来週水曜日からは野球部の甲子園をかけた各県代表校による地域大会が始まる。

 だけどまずは美也子だ。土曜日に会うことにする。


 教室でなにやら読書をしている沢村に話しかける。

「なあ…土曜日休んでいいか?」

「ん?ああ、OK」

 ずいぶんあっさりだな。

「なんか最近忙しそうだしな。この間も『女神様』ともども二日休んだろ?」

 まあ俺助っ人だし。

「馬鹿言うな。監督が一試合は先発させるとか張り切ってたぜ」


 おい…初耳だよ。ついでに勝ち進む気なんかよ。

 それが一番驚いたわ。


自分が行き詰まってからの行動とか、厳しいものです。

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