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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第11章:秋のできごと

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自分もまた悪意

「誰と問われれば答えねばなるまい」

 あれ、素直だな。

「簡潔に言えば妹、よ」

 え…なぜそこで女性言葉。

「主っぽくしてみたんだけど」

 あー千種っぼく…ね。オクターブ低くなければ確かに分かりにくいかも。

「これ以上はアイデンティティが」

 …どこでそんな言葉を覚えたんですかね。

「この娘を通してよ」


 あ…そりゃそうか。

 分かった。なら相談なんだけど…

「なに?」

 明らかに分かる違いを残しておいてくれませんか?

「じゃあ低い声ならあたし…わしじゃ」

 騙さないでね。

「もちろ…無論じゃ。」


 じゃあさ、妹さんのこと教えてくれないかな。


「わしの次に有名な古代ヒロインだわ」

「なんか感情がぐちゃぐちゃになるから、お願い…口調をなんとかしてくれないかな」

「じゃあ優しくこっちで」

「ありがたい」


 ミコさんの話は簡潔だった。妹トヨが御地で寂しがって誰かの中に入りたかったらしい。姉が勝手に千種に入り込んだものだから。


「あー気持ちは分かるけど…」

「なによ」

「そんな簡単なものなの?」

「優れた器でないと無理よ」

「千種が優れてると?」

「あたしよりもね」

「じゃあ大杉は?」

「本人が悪いわけじゃないけど、入るには大変…かな」


「中に入った方がいいの?」

「病気の人がこれ以上増えないことを祈るなら」

「あの病気、妹さんが?」

「直接じゃないけど…きっかけにはなってるかな」

「ミコさんから見て誰かに入って問題ある?」

「基本あたしより優しいから問題ないよ。最初は戸惑うかもだけど」

「適した人なんているの?」

「知る限りは…あの美也子と言う娘が唯一」


 やっぱり、か。

「姉じゃ…ダメなのか?」

「自我が強過ぎる」

 確立されてると言った方が適切なのかも知れない。

 千種も美也子も…まだ10代だからだ。

「そもそも俺じゃダメ?」

「あたしが許さない」

 どういう種類の感情なのだろう。


 問題はないと言うけれど、美也子に得体のしれないものを宿らせてくれ…なんてムシが良すぎる話だ。まるで…この地の巫女…ああ結局俺だって、個人の犠牲を強いる「悪意」じゃないか。


「メリットならひとつあるわ」

 自分が悪意のある人間だと気付き、沈みかけるとミコさんは不意に言い出した。

「どんな?」

「いろんな害意から本人だけは守られるのよ」

「自分がきっかけのことに?」

「そう言うこと」

「ミコさんがきっかけになる、他人の悪意や害意は?」

「ないと、思う。トヨだってあたしを求めて寂しがってるわけだし」

 釈然としないけど、本人がきっかけの悪意は本人には及ばないと言うのは、当然のような、誰の責任だよと言うべきのような。


 個人の善悪の判断など事象には遠く及ばないことは確か、だ。


 あまりに受益(メリット)が大きすぎる。

 どこかに瑕疵はないものか、今回の和田さん訪問を含めて姉に相談しよう…。

 そのようにして、千種の中の人…ミコさんとの初めての対面は終わった。

ミコさんともうお友達の幸平くん。

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