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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第11章:秋のできごと

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入ろうとする者

 コーチにはすぐに連絡を入れますからと約束をして別れた。

 その別れ際に千種は丁寧にお辞儀をしていたのが印象的だった。


 今回千種がおとなしい。和田さんのお宅では居眠りをするくらいだ。

 だけどそのことを咎める誠心さんではないことを俺は知っている。 


「情報の遮断?」

 なにそれ。

「表情とか仕種とかで人情に引っ張られることってあるでしょう?」

 千種だと納得しちゃうけど、一般的な15歳らしくはないと思うぞ。

「あなたも同じでしょ?」

 ああ…まっ確かに。


 熟年夫婦のような俺たちは、急に降ってわいた平日の久しぶりのデートを、千種にとっては初めての、俺にとっては久しぶりの地で、楽しんだ。


 ・・・

 大学の面接らしきものは予想通りだったと、乗り込んだ車の中で千紗さんが報告してくれた。

 そして和田さん宅。

「いってらっしゃい」と美也子の背を押す華さん。

「いってきます」と美也子は返事をして、今回のドライブは夕暮れの帰途につく。

 帰りの道は我が家に続いている。


 ・・・

「お疲れ様でした、行朝さん」

 運転席から降りてきた行朝さんに挨拶をする。行きの車内で解決の見えない問題であったろうに、少しも心配をさせない姿は、大人のあるべき姿を教えてくれている気がする。

 将来…もし子供を持つことがあったら、同じことができるようになりたい…と自然に思った。


 と、その夜千種に話した。

 しみじみとした温かい気持ちだったのだけど…返って来た言葉は、

「出してもいいよ」

 だった。

 ちょっとね、ほんとに…(むせ)てしまいました。 

「なんでそうなるかな」

「分からないの?」

「分かるか!」

「捨てる気?それとも遊び?」

 呆れて違う方を向こうとすると、すすっと近づいてきて小声で囁いた。

(いつでもいいからね)

 最近耳打ちをするのにハマってないよね?


「でさ、気になってることがあるんだ」

「なに?」

「大杉がここに来たすぐの頃、御地に千種とかと行ったろ」

 スッと真顔になる千種。

「児島先輩たちとかと一緒になった時?」

「その時。児島先輩たちは帰ったけど、俺と千種と大杉の三人でさ…。今夜聞くべきかと思うんだ。ミコさん、あれ誰だったんだ?」


 直接千種の中のミコさんとコンタクトをとるのは初めてだ。とりたいと思うことさえ、今夜が初。

 あの時の意味を知っておかなければならない…そう昨日の夜から考えていた。


 無言でいること5分か…千種は不意に口を開いた。

「会いたかったのか?わたしに」

 ミコさん特有の千種よりオクターブ低い声。


(出てくるのは5分くらいか…でも変わったところはなかったぞ)

 こういったことは今後もあるかも知れず、分かったことだけ頭と心に刻み込む。


「あなたでなければ誰も分からないでしょう」

「そうだな」

「ひとつ質問があります。あの時大杉美樹に入ろうとしたのは誰ですか?」

ここでひとつ伏線回収です。

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