ペッパーくんは流暢
「水泳部に入るつもりで来たんだけど」
「この学校、強いの?」
「室内プールできたから、今年から始まるみたい」
「そっか。俺は先生から見学したらって言われて来たんだ」
「私も。おじいちゃんみたいな先生」
陰謀の香りがするな。意図が読めないけど。
「時間ある?ちょっと話さない?」
同じ県ってだけで親しみを感じる。
「そうだね。どこにする?」
「まだ三日目だからよく知らないのよね」
「俺二日目だから先輩についていきます」
「なんで後輩キャラなの」
「立ち位置が、よく分からない」
「彼女ならいいの?」
「いや、死んでも拒否する」
「一番傷つくんだけど」
帰り道が同じ方向らしいので、最初に目についた喫茶店に入ることにした。校則?まだ読んでないし。
夕方だから混み合うこともなく、席に案内される。斜向かいに1組だけ。
真新しい制服からして同じ学校の生徒かな。
女子が4人。ん?4人?
「えっと…早名くん、エスコート慣れてるね」
「彼女もいないのに」
「嘘。中学の時にあなたにべったりくっついていたすっごい美人な子いたじゃない」
「あいつは別に」
「なんか面白そうね」
「面白くはない…」
あれ、橋本が黙って震え出したな。誰?今の声。
静かに千種が俺の隣に腰を下ろす。
「続きは?」
「千種。ここだったか」
般若の形相だった千種がふにゃりと笑う。
「ん。新しい彼女?」
でも一撃。
「まさか。こちら橋本さん。中学の時の水泳の…関係者?」
それを聞いてなんとか声を振り絞る橋本。
「橋本…結菜だよ」
「そんでこいつが早名千種。えーと…自分で言ってくれ」
「嫁」
短いな、おい。ついでに二文字しかないのに間違えるな。
「そうじゃなくて」
「嫁」
ペッパーくんでも、もう少し話しそうな気がするぞ千種。