雨の夕べの噂話(後編)
「その橋本姉妹の姉さんって金髪の人だろ?俺あー言う強気な感じの人苦手っつーか」
「…たぶん繊細な人じゃないかな」
?光太郎、何を知ってる?
「美人でいったら早名先輩の次だよな。スタイルめっちゃいいし」
そう言う評価もあるのか。確かに手足長いもんな。「背泳ぎ」って感じする。陸上で言うと走り高跳びみたいな。
「で、その妹さん、やっぱり」
「銀色」
「えっ?」
「染めてるらしいけど、アッシュグレーっての?」
「中学生でか」
「理由とか聞いてないから、見た目だけの話な。おまえたちも橋本先輩は分かるよな」
「美人」
「金髪を銀髪に変えて、幼くした感じだ」
名前を覚えることは壊滅的なのに、描写はうまいのか光太郎。
ちらとキントキさんを見ると興味津々で三人組に聞き入っている。
「それよりすっげぇ美人の子はどうなんだ」
姉妹してそれより扱いされる運命か…。来週橋本になにかおごってやろ。
「んー…」
光太郎が言い淀む。
「なんかいろいろ振り切っている人」
「どういうことだ?」
「嫌いなものは嫌いだし…好きなものは好きって…」
「当たり前じゃん」
「えっと、貫く?なんかそんな感じ」
「カッコいいな」
「幸平先輩一筋だったって言ってたし」
「川上先輩が『早名くんはハーレム作るのが夢らしいよ』って言ってたな」
おい川上ぃ。
風評被害だろ。キントキさんは頷いてこっちを一度見た。
「貫く先がいいか悪いか、好きか嫌いかは見てる人次第だろうな」
「なんだ、それ?」
さすが光太郎だ。的確に読んでいる。
「美人なのは間違いないよ。見たことない」
美也子もすげーな。
「おぉ。おまえがそこまで言い切ることないもんな」
「紹介してくれよ」
「幸平先輩に頼んでみろよ」
「なんでだろ…幸平先輩に悪いような気が…」
『女神様』の逆鱗に触れないでいてくれよ…おまえら…。
キントキさんは今度は明らかに俺に向けてにこやかに笑った。千種の古い友達だもんな。
「二人とも高良に行くみたいだよ」
「じゃあ同級生になるのか」
「楽しみだよな」
「で、折井先輩」
…やっぱり出ちまったか。なんだかんだ野球愛好会のマネージャーが一番接点あるもんな。
若葉と言えばそのたわわな…。
「やっぱりおっぱ…」
「幸平」
柔らかな声が耳に届く。
「千種。こっち」
練習を終えてマネ仕事のあと千種と合流する手筈だった。入り口から千種が近づいてくる。
「幸平さん、いつから?」
素早く俺に近づいた光太郎は小声で俺に問う。
「『女神様』の当たりから」
「ほとんど最初からじゃないすか」
「忘れよう」
「はい…」
「お互いの安全のためだ」
「了解す」
千種は俺と光太郎、キントキさんを見比べ
「珍しい組み合わせね」
と言い、俺の隣に座って向かいのキントキさんと話し出した。
英米はとっくに逃走していた。
噂話はいけないことなんでしょうけど、少し背徳感を感じさせます。次話からヒメ、マロ、キントキ三人娘。最初からいるのに初めて触れていきます。




