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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第9章:美也子の帰還、それぞれの助走

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美也子の独白2

 不自然なほどべったり、だと噂されてるらしい。

 なるほど思惑通りだ。

 あたしもちょっとやり過ぎかと思う。でも彼…幸平先輩は割と平気そうに毎日を過ごしている。

 それがちょっと腹立たしい。


 半年が経過する頃、唐突に先輩の姉と言う人があたしに接触しようとしてきた。

 葉さん…と言う人らしい。

 先輩とお姉さんのやり取りであたしの名前が出てそれなら紹介しとと言う流れになったらしい。

 自然と言えば自然だけれども、あたしにはどこか不自然なようにも思えた。


『あなたが六条美也子さん?』

『はい』

 メッセージの向こうであたしを警戒している雰囲気がする。


『幸平をあなたのものにさせない』

 強い拒絶だった。

 なんの権限で?だいたいあなたは、あたしよりどれだけ年上だと言うのだ。少しは大人の()()をしてみなさい。


『先輩を一人にしておいて…ですか?』

『利用する気ならやめなさい』

 そんな風に考えたことはなかった。だから

『恋はまだです』

 将来ならあり得る可能性を伝えた。

『今が楽しいの?』

『時間を零したくありません』

『絶対に幸平を自分のものにしない?』

『葉さんが先輩の将来を決めないのなら』


 交渉はまとまった。現状維持だ。あたしにできるのは今はこれくらいだろう。


『子供は子供らしくいなさい』

『年増に言われても』

 こちらの差は埋まらなかったけど。


 たまに葉さんからはあたしを見下すメッセージが来る。あたしは罵倒で返す。

 勘違いしないようにしていたのはひとつだけ。

 葉さんもあたしも、先輩を一番に優先する。

 それだけは共通していた。


 当然あたしは水泳部に所属し先輩と一緒にいた。県内で先輩は無敵で羨望を集めていたけど、一人だけ変わった目色で見てくる人がいた。あたしが二年、先輩が三年、その人は先輩と同学年でいつしかヤンキーっぽく金髪になっていた。切れ長の目をした美人で背泳ぎの人。遠くにいるだけで、話しかけることもなく、その人はいつも()()だった。あたしが先輩の近くにいなかったとしても、その人が先輩に近づくことはないだろうと、なぜか確信していた。


 先輩は地元の高校に進学せず、あたしの実家の地方の私立高校を受験すると教えてくれた。あんなに成績が良いのだから、合格は間違いないだろう。お姉さんに薦められたことが理由だと言う。


 踏ん切りひとつかもしれない。

 この人を追うことに価値があるのかどうか、観察しなければならない。大好きだけど、そんな風に思うこと自体が恋慕ではないことを自覚する。


 そして先輩が旅立つ三月の始め…父が不意に亡くなった。

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