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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第8章:母はきませり

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虎穴に入らずんば

「あなたが早名幸平さん?」

 やけに威圧感のある言葉で母は幸平くんに語りかけた。幸平くんは萎縮して正座している。

 かたや母もきちんとした和装で背筋が伸びている。


 どうしてこうなった…のは、あたしが母に幸平くんへの片思いを告げたからだろうな。

 ちらっと幸平くんがあたしを見たから、あたしは母に見えないように彼にピースサインをした。

 あたしに靡かなかった罰だ。


「結菜!」

 え!あたし?びっくりして正座しちゃった。

「許してもらえる人に甘えてふざけるのは今日が最後よ」

 身内から懲役何年みたいなこと宣告されたんだけど…。


「改めまして、橋本薫です。わがままに育った娘に代わりましてお礼申し上げます」

「ご丁寧にご挨拶ありがとうございます。早名千種、幸平の母早名千紗でございます」

「ではこれより末永くお付き合いいただければ幸いでございます。…ところで…」

 紋切り型の挨拶から突然、

「ぜひ私に行朝さんをいただきた」

「「「「アホか」」」」

 千紗さんに幸平くん、ちぐさちゃんとあたしまで全員で突っ込まざるを得なかった。


 やりやがったな…。

 母を横目で睨む。

 ピースサイン出すな!年を考えて!


「…生きて40年、なお愛情の足らなかった娘たちに済まないと思っております。それなのにこうして私個人のために皆さまにご迷惑をおかけしまして…それでも望むことが可能であれば、娘とともに長く生きたい…そう願う毎日です」

 長く、そして短い言葉に母はすべてを込めたと思った。


「いっぱい遊びましょう」

 そう言って千紗さんはにっこりと笑った。

 ちぐさちゃんは千紗さんみたいな大人になるんだろうか。

 あたしは…。あたしの母みたいに…なるのだろうか。


 母はこちらにすぐに来た。妹はけいちゃんのお宅で数日過ごして()()でここまで来るらしい。

 今なら分かる。

 一人立ちを促しているのだ。由麻にはあたしでもお母さんでも、困ったらすぐに連絡するよう何度も念を押している。

 到着するや母はちぐさちゃんのお宅をすぐに訪ねた。

 そして冒頭である。


 はあ……。


「もう千種は嫁に出した気分なんですよ」

 にこやかに千紗さんは言う。

「そうですね…」

 と母は幸平くんを見て

「しばらくぶりに…いい男の子を見た気がします」

「ええ、私も」

 新しいなにかのプレイだろうか。


 千種ちゃんが二人を交互に睨むと、二人はなんとも言えない顔をして視線を千種ちゃんから外した。


「二人で葉さんのところに行こうか」

 千種ちゃんの言葉。

「子供のいない虎穴って入る意味ある?」

 幸平くんは返す。

 千種ちゃんが真剣に悩み始めた。


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