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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第8章:母はきませり

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ごめんね

「葉さんてすごい人ね」

 まだお会いしたことないけどちぐさちゃんのお師匠さんだって言うくらいだから、きっとすごいんだろうね。

「それとお友達の千種さんのお父さん…いい男よねえ」

 ちぐさちゃんのお母さんが妻だよ?変なことしたら…想像できないくらい怖い。


 水曜日の昼から毎日母と電話で話す。今までの無関心ぶりが嘘のように話題が尽きることがない。


「ところでごめん。まだアパート見れてない」

「聞いてないの?あなたの横空いてるからとりあえずそこに行くわ」

「もう決めたの?」

「そうお願いしたのだけど」

 葉さん、忘れちゃったのかな?


 葉の悪い癖を知るのはずっと後の話。


 母がしんどいのは内臓らしい。ひとまずリモート診察で頓服を処方されたと聞いた。病名が分かり安心もしたことだろう。本格的な治療はこっちに来てからになる。


「あなた将来どうするの?」

 いきなり重い話題だな。

「まだ分かんないよ。水泳だってどこまでタイム伸ばせるか分かんない」

「そうねえ…。お料理ならあたしが仕込んで一人前にしたら一生食べていける。お習字でも生徒さんに教えたら、生活費くらいは稼げるわよ」


 母と話すようになって気がついたのは、品の良いしゃべり、だった。そこは見習わないと、と思う。尊敬できる面を見つけことになるとは半年前なら想像もできなかったこと。


「さくらや由麻よりあなたは器用だったからね」

 そっか。あなたは私を見ていてくれたんだ。

「お金を稼ぐって大切なのは分かるんだ。でもちぐさちゃんと幸平くんの近くにいると、…ああいうのいいなって」

「ずいぶん仲がいい二人なんですって?」

 ちぐさちゃんにやり込められる幸平くんを思い出してちょっと笑いそうになる。

「あたし、幸平くん好きだったんだ」

 母は少し間を置くと

「家訓は?」

「他人のものに手を出さない」

「自分のものにしちゃえばいいのよ」

 母は悪女だった。私はやはりこの人の娘のようだ。


「もういい」

「失恋でいいの?」

「片思いで夢が見れたし」

「ほんの片思いだったの?」

 答えない。あたしの意地と今は感謝と、思いはうまく口にできない。


「いい恋したのね」

「あー、彼からお願いごとされてた」

「どうしたの?」

「愛人にならないかって彼に誘われた」

「…結菜…その子うちにつれてらっしゃい」


 ごめんね、幸平くん。

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