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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第8章:母はきませり

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あたしの理想

「午後の授業なんだっけ?」

 幸平くんがちぐさちゃんに尋ねる。

 泉田先生の歴史だ。

「昼寝か…今日水曜日だ」

 どんな覚え方してるのとちぐさちゃんに怒られる彼。


「全部説明するの難しいな…泉田先生の(授業を)サボりにしよう」

 えっ…と。

「美樹にノート頼んでおいてくれた?」

「あとでなにしてるのか教えてくれってさ。心配してたぞ」

 席の周りが三人もいなければ不安になるだろう。あとでみきにも謝らなくちゃ。

「お礼は光太郎の勉強教えてくれってさ」

 幸平くんが無駄に学力がいいのは知ってる。ちぐさちゃんもたまにわからないことを幸平くんに聞いてるし。


「で…さ。前提がある」

 なんだろう。

「自慢じゃないからな。おまえに限って勘違いしないだろうけど」

「幸平、言い方!」

「あっ…悪い。俺の姉ちゃん、変に有名なんだわ」

 それから彼はお姉さんのことを説明してくれた。みんなが知ってるSFアニメのキャラやアニメ映画のヒロイン役声優であること、あの(!)遊佐選手の妻であること、医療系メーカーの研究室にいること…。ただし前二つの名前を公表していないこと。

「弟の俺でもマジで信じられないけど一人で」

 全部こなしている、と彼は言う。

「んで今回は、その人脈をフル活用してもらったわけで」

 え…何があるの?


 とても難しい病名をちぐさちゃんがあたしに告げた。母がそれにあたると。

「美樹のお母さんと同じみたい」

 どういうこと?


 ちぐさちゃんの説明だと、死に至るまでには時間がかかるが人それぞれで運動機能、認知機能に障害が出てゆっくりと悪化していくらしい。

「母の病気…誰がどうやって…」

 二人は顔を見合わせて

「それなあ…」


「橋本…!黙っていたけど、俺…能力者なんだ!」

『キミヨリ』の台詞。

 ちぐさちゃんが幸平くんにデコピン。

「なんで姉弟なのに似てないかな」

「…てて。俺は悪くない」

「二人ともありがとう。いつか…教えてくれる?」

 そう言うと二人はごめんと、頭を下げた。

 事情があるのなら聞かない。自分のルールを適用しよう。


「その病気、ここの風土病なんだって」

 それならなぜ母が?

「誰も仮説も思いつかないみたい」

 難しいんだ。

「寛解までの道筋はまだ分からないけど、悪化を遅らせたりとめたりできるんじゃないかって、今の研究段階なら」


「もしかしたら大学病院で…?」

「こっちに来れば何かと考える選択肢が増えると思うよ」

 そう言うことかと話が繋がる。


「ゆなちゃん、料理上手だよね」

 母に教えられたから。

「そりゃ京都の有名店の店主だもん」

 そうなの?


「字も上手いよな」

 子供の頃から教室に通ったくらいで、人に教えるのが精一杯…。

「師範並みらしいよね」


 水泳だって…。

「インターハイ2位の人に言う?」


 頭も良くないし…。

「それはまあ…頑張れ」

 褒めてよ!


「店を手離して、妹さんの手続きが完了次第こっちに来るって」

 よくもまあ、あの母を説得…頷かせたものだと思う。

「仕事は…とりあえずリモートで姉ちゃん夫婦まわりのなんやかんやをお願いするって言ってた」

 なんやかんや…。

「姉ちゃん、将来は飲食店経営してもらって不労所得で豪遊だとか浮かれたぞ」


 たぶん。

 相当なことを、幸平くんのお姉さんはしてくれたのだろう。

 二人に頭を下げた。

「やめて」

 ちぐさちゃんは優しく手を握ってくれた。

「愛人にならない?」

 それは願ってもないこと…。


「幸平!」

 この二人はあたしに理想となった。

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