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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第8章:母はきませり

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近いうちに

「幸平?」

 ちぐさちゃんが幸平くんの名前を呼ぶ。

「おー」

 間延びした口調でジャージ姿の彼が現れた。サボり?体育だったよね。

 あ、あたしもか。


「橋本が具合悪くなったから、千種が付き添って帰ります。それで良かったよな?」

「先生に…」

「あー言ったよ。お大事にだってさ」

 普段のちぐさちゃんがしっかりしてるからかな。あっさり認めてもらえたみたいだ。

「それとほら」

 カバンが二つ。幸平くんはできる男だ。

「お礼は橋本の手作りがいいな」

 ちぐさちゃんが気色ばむ。

「普段が不満?」

「橋本は豪華な味で、千種は嫁の味、だろ」

 あ、ちぐさちゃんがふにゃっとした。

 ほんとこの夫婦は…。


 なんだか落ち着いた。

「今日の練習、代わって」

「マネージャーね。いいけど最近みささんに煽られるんだよなあ…。もう引退したのに…」

 幸平くんのベストって児島みさ先輩のターゲットタイムなんだよね、本人が言ってたもの。

 もっとも先生やみきにも短距離の相手をさせられて、本気で嫌がってる場面を見たこともある。

「あっそれと…」


 なんかちぐさちゃんが幸平くんに耳打ちしてる。

 みるみる幸平くんの顔が曇る。

「マジか?」

「うん」

「えーと…姉ちゃんと行朝さんだな?」

「そう」

「行朝さんにはとりあえず話す。姉ちゃんは…3日以内…に」

「お願い」

「橋本」

「え?」

「終わったら俺のお願いひとつ聞いてくれ」

「「はあっ!?」」

 あれは後でちぐさちゃんに怒られるやつだ。

 何回も見た。

 あたしはちぐさちゃんと一緒に帰り、ずっと話した。こんなにも長い時間誰かと話したのはいつ以来だろう。ちぐさちゃんはなぜかあたしから離れず、次の昼と夜、次の次の昼も一緒にいた。

 学校の休憩時間も部活も、夜はあたしの部屋で一緒に寝て…。どこでもちぐさちゃんはちぐさちゃんで。

 たまに幸平くんが現れてはちぐさちゃんと話をして、あたしにバカなことを言いながらまた姿を消した。


 泣いた日から二日後の昼。三人でお昼を食べていると彼の携帯が鳴った。彼は誰か確かめると渋い顔をして応答した。

 あたし邪魔だよね。

 席を立とうとするとちぐさちゃんはあたしの腕を優しく掴んだ。

 首を振る。

 ここにいていいってこと?


 彼はうんとかああと答えていたけど、最後に

「助かった。ありがとう姉ちゃん。もう一生一度は…」

 たぶんお姉さんに怒られたのかな、彼は元気なくちぐさちゃんに

「二度はないと思えってさ」

「大丈夫。まだあたしの分が残ってるよ」

「それって千種に頼まなきゃいけないってことだよな」

「二人でひとつあるの」

「じゃあ俺も頼める…んだよな?」

「あたしが認めたら」

 はあ…と彼は消沈した。


「ね、結菜」

「今回は悪いけどあたしの言うこときいて」

「いきなり、なに?」

「お母さんと妹さん、近いうちにこっちに来るよ」


 え…。


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