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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第8章:母はきませり

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誰それ?

 高良高校の学校説明会が夏休みにあったと目の前の美樹太郎は言った。


「まだ美樹太郎っすか?」

 だってなんか恥ずかしいじゃない、名前呼び。

「ずいぶん際どいところを攻めるって聞いたんですけど」

 へー、誰から?

「あだ名は全然いいですけど姉を絡めるのはできれば…」

 あ、みきと同じでライン越えたら怖いタイプか…。


 いいあだ名はないものかとつい顔を無遠慮に眺めてしまう。

「えーと…あんまり見つめられると照れるって言うか…」

 美人に照れるってか?可愛いとこあるじゃないの。

「金髪が似合ってます」

 色にこだわりがあるだけで別に好きなわけじゃないけど。


 すっと会話が止まり互いに見つめ合う。

 え、なに?なんでこんな状況に?


「あそこで母と姉を助けてもらったんですよね?」

 美樹…光太郎くんはそうやって優しげな目をしながら歩道の方を指した。

「きちんとお礼を言ったことがなかったです。あの時助けていただいてありがとうございます」


 ごさいました、じゃないんだ。

「え、俺意識してなかったんで失礼でしたか?」

 逆。今もあなたが大切に思ってることが分かるわよ。

「そうですか…俺あんまり賢くないんで」

 苦笑しながら光太郎くんは下を向く。気性が真っすぐなんだろう。お姉さん的には…満点に近いかな。

 ん、満点?なんの?


「あんまり試験対策できてなかったからテストをサボれて良かったって言うか…」

 漫画みたいに照れ隠しのわずかな笑いしか出ない。車椅子のお母さんと平日に歩くみきを見かけたらそれはまあ、とにかく話しかけるわ、例えいつでも。

 つまり…

「お節介のつもりはなかったよ」

 なぜあそこに二人がいたのか、真相は誰からも聞かずにいる。触れる必要がないとその時判断し、それを今も守っている。


 そんなに会話が弾むわけでないけど気まずさは消えていた。


 あ、なんか恥ずかしい。それよりも

「なんで由麻が学校説明会に?」

「聞いてないんですか?」

「初耳なんだよね」

「会ったこと言わなきゃ…良かったって流れ…ですかね」

 あたしはズルい女だから恩に着せて聞き出すことにする。

「由麻には内緒にするから聞いたこと教えて」

「妹さんからも内緒って言われたから…どうすれば…あっ幸平さんに」

 電話しようとするな、少年。


 思わず止める。

「年上の分あなたに迷惑をかけないよ、約束する」

 なにかに驚いて光太郎くんは手を止めた。

「それなら…」

 うん、やっぱり素直だ、この子。


「説明会の時近くにいて、『大きいね』って話しかけられました」

 普通かな。妹はあたしよりは人見知りしなかったはずだ。

「水泳の特待枠に応募したいんで下見に来たって言ってました」

 普通じゃない。あたしが驚く番だった。母の知人からここを薦められて進学したのはあたし…もっと有望な妹なら同じ話があっても不思議ではない…はずだ、世間的には。

 だけど母とは心の交流もないし、姉がアメリカに行ってしまった以上、身近な家族は母には妹の由麻しかいないはずだ。あり得なくはないけど、違う道もたくさんあると思う。

 違和感…だろうか。


 …仕方ない、事情を聞くしかないのだろう。今夜確かめることにしよう。

「分かった。ごめんなさい、無理に聞いて」

「それで…連絡先教えてって言われて教えたんですけど」

「教えたの?」

「まずかったっすかね…。それとシルバーアッシュっていうんですか?」

 え?

「綺麗な銀色の髪だったですね」


 あたしと同じでグレたのかな、由麻。

「もう一人話しかけてきた人もいましたけど…その人のことも?」

 幸平くんみたいにやたら女を引きつける星の下に生まれているの?ちぐさちゃんみたいなしっかりした人がいないと将来大変だなと勝手に同情する。


「由麻以外は関係ないと思うけど…ちなみにどんな子?」

「とにかく美人ですね…今まであった人では一番です…間違いありません」

 断言しちゃった。

「早名さんのことをお姉さんって呼んでました」

「幸平くんの嫁の?」

「はい」

 光太郎くんもそういう認識なんだと思いながらも、あたしは違う言葉を口にしていた。


「へー、()()()?」

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