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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第8章:母はきませり

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122/211

なにそれ?

 二学期初日の帰り道、あたしは駅前を通った。いつもの帰り道。九月にしてまだ暑く、軽い練習後の身体に堪えるような湿気感だった。それでもこの地の暑さは去年までと違う。


 あたしはもともと古い都に育った。母はその地の生まれではないための影響か、方言もアクセントもなんだか異邦人みたいになじむことができなかった。それゆえに少しずつ内向的になっていった気がする。だけど母が悪いとか、あたしが周りになじみにくい性格だとか納得できる理由は見つかっていない。


 春に一人この山国に来て、運命と思った人がそこにいた…はずなのに。

「婚約かあ…」

 零れ落ちる言葉は意外に心地よいものだった。

 高校一年で婚約とは早すぎるとはみんな思うだろう。でも案外マイペースな彼と、万能感あるわりに嫉妬深い彼女は、あたしにはとてもお似合いに見えている。


 午前のホームルーム中にみきの言っていた

「私には二人でいるところを見るのが幸せなんだ」

 は、実はあたしも思ってたりする。あたしが彼の未来に関われない羨ましさで、少しだけ彼に意地悪になるのはせめてもの意趣返しだ。

 彼女…ちぐさちゃんはそんなあたしを見抜いているのだろうか、春先のような嫉妬は影を潜め、今はあたしに語りかけてくれる。


 だからだろう。彼には思うことはあっても、()()()()()()()()()()()()()()

 彼女自ら婚約も体を重ねたことも、あたしに報告があったわけではない。だけどそのことに悔しさとか疎外感とかを感じない。たぶん彼女があたしを理解して、互いの心が近いからだろう。

 事実としては不器用なあたしに彼女が寄り添ってくれている形だと思う。

 実感としては親友の彼氏なのだ。そしてあたしが大切なのは…無論…親友だ。


 そんな風に簡単な自己分析を駅前の公園のベンチでしていると…

「あ、橋本さん」

 と声をかけてくる大柄な少年が目前にいた。


 少し考えた。誰だっけ?

 少年はあたしに声をかけたくせに二言目がない。

 知っているような、えーと…。

 ヤマ勘でいっか。

「あんた、大杉…美樹太郎だっけ」

 太郎がついていた気がする。

 びっくりした顔をして、少年は

「姉が混じってます。由麻さん」


「バーカ、由麻は妹だよ」

 あたしの妹は橋本由麻。姉と同じ日本水泳界の新星…。

「あ…失礼しました」

 素で間違えたのか、こいつ。

 あたしもたいがい失礼だけど。

「いざ尋常に名乗りをあげようか」


「北さんに聞いてましたけど、ほんとに素直じゃないんですね」

 赤髪のプール破りの居候先に住んでたんだっけ。つってもこいつも居候だよね、確か?


「光太郎です。ゆ…さん」

 誤魔化したな、太郎。

「橋本三姉妹の一番いらない子の結菜」

「…どうも…」


「それにしてもよく妹の名前知ってるね、お姉さんから聞いた?」

「姉にも黙ってたんですけど…由麻さんからお姉さんや橋本さんにはできれば内緒にしててくれって頼またから」

「忘れてたんでしょ?」

「…実は…由麻さんって言ってから思い出しました…はは…やべ…」

「待って。頼まれた?会ったことあるの?」

「夏休みに一度」

 すごく気になるので畳みかける。

「どこで?」

「あ、高高の学校説明会です」


 ふーん、()()()()


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