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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第8章:母はきませり

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副担任と自己紹介

「…今日からよろしく、副担任を務めさせていただく…依田です」


 大柄な体を縮こませるように見えるかつての巨星。むしろ復活と言っていいのかも。

 北さん。


「説明が難しいのですが、私が残りの半年君たちと一緒に学ぶことになります。担任は泉田先生です。複数のクラスを一人で担任することが無理なのでこのような体制をとることになりました」


 インターハイ優勝者2名を抱えて、自身もスター選手と結婚したことで学校側が配慮(?)したということなんだろう、私見だけど。


 赤い髪を黒くして、パンツスーツ姿のかつての北さんは依田玲として、新しいクラスの前に立っていた。異例ずくめではあるものの、学校の広告塔の役割も担わされるんだろうな。

 そこを理解しつつも、教育大卒の経歴からこの立ち位置を自ら受け入れた、と後から聞いた。


「経験がまるでないことを最初に皆さんにお伝えします。ですのでこれから自己紹介をしていただいたあと学級委員を2名お願いしたいと思います」


 ちなみに席順はなかったので勝手にみんな座っている。席替えがすぐにあるはずだ。ちなみに野球愛好会が依田先生(!)に向かって左前に陣取っている。言っても沢村、田所、川上、黄田しかいないんだけども。それにつられるように太閤さんやら男どもが左側にいる。ぽつんと若葉がそのグループに紅一点混じっているが、全員が野球愛好会マネと知っているらしく当然のように受け入れている。

 俺?右の奥だ。つまり出入り口に一番近い席。前に橋本、斜め前は大杉美樹、左隣は早名さんと言うらしい。

「またなんかおかしなこと考えてるでしょ」

 千種が小声で絡んできた。

「…全然?」

 野生の勘、怖い。ただ

「あーあっち行きたい」

 と愛好会の方を眺めていただけなのに。四六時中千種と一緒にいるのも()()()()気がしてただけだ。


「まずは私。最近やっと依田になった北玲と言います。ここでは英語と体育を担任いたします。クラブは英会話顧問の予定です」

 あれ?水泳教室は?


「同じ水泳教室の参加者の立場なんだって」

 また思考を読むなよ、嫁。


「えーといろいろと質問があると思いますが、言えないこともあるので、個別にあとで聞いてください。答えられることはきちんとお話します」


 先生なりの覚悟をさらりと語った。


 では、と自己紹介を促す。

 濃淡はあれど、既に入学から半年近くが経過している。軌道修正したい者以外はそれほど自己アピールしたくもならないだろう。目立ったのは、野球しようぜの沢村と、ロリじゃないよとヒメさんくらいだろうか。なぜか、先生が引きつっていたけど。あの二人、妙な緊張感が見てとれる。


 残りがあと二名となり

「早名千種です。隣が婚約者です」

 と端的に発言した。

 の割にはクラスの反応が薄い。先生も馬耳東風の面持ちで流す。


 え、なにこれ。まるで朝には日が昇るみたいな当たり前の反応。

 当事者の俺が一番戸惑うじゃないか。

 …そして橋本よ、なぜ艷やかな目で俺を見る。


 こうなったら。

「早名…幸平です。今年の…」

 と日本選手権優勝者だと、初告白しようとしたら、隣の千種が手を伸ばして俺の腕を掴んだので止めた。


 え、ダメなの?

 仕方なく

「…今年の優勝は」

 と義兄のチーム名をあげた。当然先生の配偶者のチームでもある。

 なんか受けないギャグでもやった雰囲気になった。そんなつもりなかったのに…。


 あとで千種に止めた理由を聞いたら

「これ以上肩書を増やす必要ないよ」

 とのこと。それはそうかもと納得してしまった。


 学級委員についてはヒメさんが

「千種でいいんじゃない」

 に異論が出ず、あっさりと千種に決まった。

 そして自動的に俺も。

 ますます群れのリーダー感が千種に相応しくなってきた。

 でも俺は付属品じゃないからね。主張はしていこうと思う。

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