オールスター
二人は年月を埋めるように話した。
質問をはさみ、会話を重ねて。
結論ありき、ではない。
自分が育てた思いを確認するだけだ。
「なんかいっぱい彼女いたらしいじゃない?」
玲が不安そうに尋ねる。
「落ち着いたらアキラに聞いてみろ」
「そんなに仲いいの?」
「時期が来たら紹介してやる」
「最近遊佐くんの大ファンの家に行ったよ」
「そんな奇特な家があるのか」
「不思議な人たち」
「不思議?」
「そう。不思議」
「おまえには悪いけどな。ここの町好きになれねーんだ」
「どうして?」
「アキラのファンなんざ、俺の敵、だ」
「天邪鬼なの変わらないね」
「うるせ」
見つめ合う二人。
「お取り込み中のところ、すみませんが…」
いきなり声をかけられる。
「誰だよ、邪魔するやつなんか犬に…。っておまえ美也子か?」
「控え室でなにしてるんですか?お兄さん。それで誰です?このババア」
「…!」
「久しぶりに会えたのが、ババアと甘々の瞬間とかトラウマものなんですけど」
「日向。ほんとに妹…」
口を開いて話し始めた玲が二人を見比べて、うーんと唸る。
「兄妹だよね。すっごく似てる。口が悪いのも」
「玲!」
「あっ」
「北玲さんですか。暴言がほんとお上手で」
「できれば嫌わないで。…間に合うよね?」
「なんか騒がしいな。ヒナ、何を騒いで…」
遊佐晶登場。そして問う。
「知り合いか?こちら?」
「あー……こっちが北玲。おまえなら分かるだろ?」
驚くように玲を見やる晶。
「なぜここに?」
「春に帰国したんだとさ」
「…そうか…やっと会えたのか…良かったなアキラ」
「後で玲と飯食おうや」
「もちろん!…でもう一人の」
と美也子を不思議そうに見る。
「妹だ」
と日向。
「妹です」
と無理にカットインする千種。
「え?義弟の嫁の妹だから…俺の義妹?ヒナ、おまえの家、こんなにややこしいのか?」
混乱する遊佐晶であった。すべてを知ってる遊佐葉はどんな絵図を描いていたのだろう。
混乱の中、プロ野球選手2名とパートナーたちは料亭を辞し、次の予定地に向かう。一人無職は暇だからくっついて行っただけだが。
美也子は迎えが来るとかでそこに残った。夏休み中にこっちに転校するとか騒いでいたが、そんなに簡単にできるものだろうか。千種に聞いてみよ。
「先輩がいなくて暇だから少し泳いでるの」と、らしくもない近況報告を残して。
わが早名の面々は…千種邸に帰るのだった。
俺は疑問に思う。結納って必要だったのか?
そして行朝さんはいつ正気に返るのだろう。
翌日。
プロ野球オールスターゲームを一人見ながら橋本結菜は大ファンの依田日向の活躍に嬉しくなっていた。
「二打席連続のホームランかあ。こんなかっこいい人が彼氏だったらなあ」
その後ヒーローインタビューを聞いて絶句したのは言うまでもない。